相続税専門税理士の富山です。
今回は、名義預金に関する判決事例について、お話します。
出典:TAINS(Z264-12551)(一部抜粋加工)
東京高等裁判所平成26年(行コ)第187号更正すべき理由がない旨の通知処分の取消
請求控訴事件(棄却)(上告・上告受理申立て)
平成26年10月22日判決
贈与者とされる方の行動で贈与が否認される
認定事実及び証拠の諸点に加え、本件申告預貯金等を贈与する旨の書面が作成されていないことをも勘案すれば、亡乙は、相続税対策として、毎年のように、贈与税の非課税限度額内で、控訴人ら親族の名義で預貯金の預入れを行っていたものの、証書は手元に保管して控訴人ら親族に交付することはせず、控訴人において具体的な資金需要が生じたり、亡乙自身において具体的な資金需要が生じた際に、必要に応じてこれを解約し、各名義人の各預貯金の金額とは直接関係のない金額を現実に贈与したり、あるいは自ら使用することを予定していたとみるべきである。したがって、亡乙においては、昭和55年頃当時又はその後の各預入の当時、将来の預入金額又はその後の預入れに係る各預入金額を、直ちに各名義人に贈与するという確定的な意思があったとまでは認められないというべきである(原審判決引用)。
自分のお金を親族名義にしても、それが形式的なモノであれば、贈与は成立しません。
110万円の非課税枠は、1年単位のモノです。
(暦年課税贈与に限定してお話すると)今年贈与しなかったからと言って、来年2年分、110万円×2年=220万円を非課税で贈与できるワケではありません。
そうすると、「(今年のうちに)とりあえず110万円ずつ、お金を動かしておこう」とお考えになるかもしれませんが、動かす(名義を変える)だけでは贈与は成立しません。
その他にも次のような論点がありました。
亡くなった方が親族名義の預貯金を解約
贈与が成立したら、その贈与した財産は相手(受贈者=もらった人)のモノです。
贈与者(あげる人)とされる方が、親族に贈与したとされる預貯金を(勝手に)解約したら、贈与したのではなく、自分のモノと認識していたから解約した、と税務署に見られます。
もらった人が届出印を保管
「亡乙(贈与者とされる方)が、平成15年以降、控訴人及び戊(受贈者とされる方)名義の定期預貯金の届出印を所持していなかった」ということは、その定期預貯金は亡乙が使うことができないワケですから、贈与者のモノではなく、受贈者のモノ、つまり、贈与が成立していた、ということを主張できるのでしょうか?
亡乙は、平成15年以降も、本件申告預貯金の証書を控訴人及び戊を含む各名義人に渡すことなく、自ら保管し続けていたことが認められるところ、平成14年以降における定期貯金の解約の状況とその使途に照らすと、亡乙が証書を保管していたのは、それまでに預け入れられた金員の具体的な使途につき自己の意思を反映する余地を残す意図があったためであるといわざるを得ないことは、補正後の原判決に説示するとおりである
贈与者とされる方が届出印を持っていなかったとしても、証書を渡さなかったとすれば、その定期預貯金を管理・支配しているのは依然として贈与者とされる方であり、受贈者とされる方は、その定期預貯金を使えない状態であるワケですから、贈与は成立していない、と税務署に見られます。
想う相続税理士