相続税専門税理士の富山です。
相続が発生すると、亡くなった方の預金口座がロックされて、キャッシュカードなどがあっても、お金が引き出せなくなります。
数年前の民法改正により、「相続された預貯金債券の払戻しを認める制度」というものができました。
これは、遺産分割が終了するまで亡くなった方の預金の払戻しができず、生活費や葬儀費用の支払いなどが困難になってしまうという不便を解消するためにできたものです。
しかし、法定相続分の1/3までという金額制限がある場合があったり、相続関係書類を用意して提出しなければいけないなどの手間がかかるため、必ずしも上記の不便を完全に解消するものとは言えません。
そのため、あまり認知されず、それほど活用されていないのではないか、というのが実感です。
そうなると、やっぱり亡くなる前にお金を引き出しておこう、ということになるのは当然です。
預金を引き出すということは現金という財産を発生させるということ
預金を引き出すことにより、手元に現金という財産が発生します。
預金については、残高証明書により相続時点における金額を証明することができます。
しかし、現金については残高証明書がありません。
残高証明書がないということは、逆に言うと、金額の証明が難しい、ということになります。
「現金なんてどう使ったかとか分からなくなってもいいんだから金額の証明だって適当でいい」なんてことはありません。
計上ミスが起こりやすいワケですから、逆に税務調査などで重点的に見られるポイントになります。
「知らない」「分からない」は通用しない
亡くなる直前の口座からの出金は、その方のご病気の症状が進んでいたり、お体が悪くなっていたりして、ご自分でできないため、相続人の方が手続きをされていたりすることが多いと思います。
そうすると、「亡くなった本人がやったことだから分からない」という説明は通用しません。
亡くなる直前であれば、そんなに昔のことではありませんし、「大事な財産である現金」をそんな分からなくなるような管理をするハズがない、という前提のもとに説明を求められます。
現金の動きをきちんと説明できるようにしておく
相続税とは別に税務署が相手にする会社(法人税)は、現金の動きをきちんと帳簿に付けています。
そして、その帳簿の動きを証明する領収書なども保存しています。
相続税の申告においても同じように、どのように現金が引き出され、どのように使われたのかを説明できるようにしておく必要があります。
会社と比べればそんなに複雑ではないハズです。
いつ引き出して、何に使ったのか、そしてその領収書などを保存しておく、ということです。
相続税の申告は、税務署のことだけを考えればいいワケではありません。
遺産分割協議において、他の相続人が財産の内容を確認したい、と言って来ることもあります。
その時に、きちんと現金の動きが説明できないと困ることもあります。
想う相続税理士