相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税申告における貸家・貸家建付地評価について、お話します。
建物を他人に貸すと土地と建物の相続税評価額が下がる
他人に貸している建物は、借家権割合を控除して評価します。
借家権割合は、通常30%ですので、300万円の建物を貸している場合、
300万円×(100%△30%)=210万円
となります。
その建物の敷地は、借地権割合×借家権割合を控除して評価します。
借地権割合が40%の地域で、建物の敷地の評価額が1,000万円の場合、
1,000万円×(100%△40%×30%)=880万円
となります。
「賃貸物件=他人に貸している」ではない
賃貸物件(一戸建ての貸家・アパート・マンション等)であれば、上記の控除ができるかというと、そうではありません。
空室(=入居者がいない)の場合には、「貸していない」ということになりますから、上記の控除はできません。
建物を貸すということは、そこに賃借人の権利が発生し、その分、持ち主の権利が減る、ということで、財産評価において上記の控除をするのです(賃借人の支配権は、家屋を通じて土地(敷地)にも及びます)。
空室であれば、そのような権利(支配権)はない、ということです。
空家でも「他人に貸している」とされた事例
実際に人が住んでいなくても、賃貸借契約が継続しているのであれば、たとえ家賃が未払であっても、貸家・貸家建付地として評価する、とした事例があります。
出典:TAINS(J78-4-28)(一部抜粋加工)
平21-10-23裁決
原処分庁は、本件家屋について①平成17年1月以降公共料金の使用実績がないこと、②賃料の支払を確認できないこと及び③請求人の被相続人の母親が死亡してからは貸しておらず空家であり、本件相続開始日において貸していない旨の原処分庁の調査担当者に対する申述をもって、賃貸されていたとは認められない旨主張する。
しかしながら、仮に賃借人が電気、ガス、水道を使用していなかったとしても、不在により使用がなかったにすぎず、本件家屋が賃貸借の目的となっていない理由とはならず、また、賃料の支払を確認できないことについては、確かに、平成10年1月以降支払われていないことが認められるが、被相続人が賃借人に対し借地借家法第26条第1項及び第27条第1項に規定する解約の申入れをした事実は認められず、借地借家法には賃料が未払である事実があれば解約されたものとみなす規定もないから家賃が未払になった後も賃貸借契約は継続していたというべきである。
空家かどうか(入居者がいるかどうか)は、外形的な判断ではなく、所有者がその賃貸物件について「(法的に)処分や利用の制限を受けているかどうか」で考える、ということです。
想う相続税理士