相続税専門税理士の富山です。
今回は、ネットの情報を頼りに形式的に税務判断をするのは危険、ということについて、お話します。
土地の評価単位の話でよく出てくる事例
出典:TAINS(評価事例大阪局290000)(一部抜粋加工)
事例集 資産課税関係 誤りやすい事例(財産評価関係 平成29年分) 大阪国税局資産評価官
(中古車展示場の一部に簡易な建物がある場合)
*誤った取扱い
被相続人甲は、郊外に所有するかなり広大な土地(1,000㎡)について、自動車販売業を営むA社に中古車展示場用地として賃貸する旨の契約を締結していた。
その契約書には、土地の一部につき、建物の所有を目的とする賃貸借部分が含まれることが記載されており、A社は、鉄骨プレハブ平屋建て建物(20㎡)を建築している。
そこで、当該土地の全てについて貸宅地として評価した。
*正しい取扱い
土地の価額は地目の別に評価することとされているが、一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、そのうちの主たる地目からなるものとして評価することとされている。
事例における土地の賃貸借の主たる目的は、中古車展示場として来客にそこで購入対象となる中古車を見せて販売することにあり、建物を所有する目的は、その従たる目的にすぎないといえることから、建物の敷地部分を含めてその全てを一団の土地とし、貸し付けられている雑種地として評価する。
中古車展示場の、建物の敷地は「宅地」であり、中古車が並べられているところは「雑種地」です。
そうすると、それぞれの土地を別々に評価すべき、ということになりますが、「一体として利用されている一団の土地」は「その主たる地目からなるモノとして全体を1つの土地として評価する」ということになっています。
したがって、この事例の場合には「全体を雑種地として評価する」ということになります。
その情報の前提条件や根底にある税務的な考え方に注意
上記の誤りやすい事例を読んで、「中古車展示場として貸し付けられている土地は、建物があっても全体が雑種地評価だ」と判断していいのでしょうか?
上記の事例では、建物はプレハブで、床面積も小さいです。
しかし、現在の中古車販売会社の経営スタイルは、これと違う場合もあります。
堅固で大きな建物を建てて、その中に多数の車両を保管・展示している場合もありますよね?
上記の事例を見て、「中古車販売会社に貸している土地は全体が雑種地評価」と判断すると、評価を間違えてしまう場合があります。
理論武装・情報武装をして相続税申告に臨む
同じ土地は1つとしてありません。
土地は、極めて個別性が強い財産です。
かつ、評価額が高くなることが多いですから、ちょっと計算を間違えると、相続税も大きく変わってしまいます。
財産評価基本通達や専門書、過去の裁決・判決の事例などに目を通し、かつ、十分検討し、どうしてそのような評価をしたのかをきちんと説明できるようにしておきましょう。
想う相続税理士