相続税専門税理士の富山です。
今回は、地積規模の大きな宅地の評価が適用できない市街化区域内にある土地について、お話します。
土地は広ければ広いほどその分だけ高く売れるとは限らない
相続する財産の中に広い土地がある場合、「地積規模の大きな宅地の評価」を適用することにより、評価額を下げることができる場合があります。
これは、土地は広ければ広いほど良いというワケではなく、広いと逆にお金に変える時に安くなってしまう、という側面に着目した評価方法です。
広い土地を開発して、一戸建ての家を建てるための分譲地にする場合には、都市計画法の規定により道路や公園などを作らなければなりません。
つまり、その部分は売れないワケですから、土地の中にお金にならない部分が出てくるということになります。
また、分譲地にするとなると、上下水道の工事等をする必要もありますし、土地が広いことにより分譲区画数が多くなると、その分だけ広告費などを含めた販売コストが高くなり、かつ、売れ残るリスクも生じてきます。
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市街地農地や市街地山林でも適用可能
「地積規模の大きな『宅地』の評価」という名称になっていますが、宅地ではなく、農地や山林でも、市街化区域にあれば適用の対象となります。
市街化区域にある農地や山林は、相続税の計算上、宅地ベースで評価されるため、宅地でなくても適用対象となるのです。
宅地への転用が見込めない場合には適用不可
しかし、市街化区域にあったとしても、その農地や山林が宅地への転用が見込めないと認められる場合には、この評価を適用することはできません。
宅地への転用が見込めない土地は、相続税の計算上、宅地ベースで評価しないからです。
例えば、山林であれば、純山林(通常の山林)として評価します。
宅地ベースで評価するよりも、評価額はかなり安くなります。
「宅地への転用が見込めない」とはどういう意味?
市街化(ある意味「宅地化」)を促進する市街化区域にあるのに、宅地への転用が見込めないとはどういうことなのでしょうか?
これに該当するパターンは2つあります。
1つは、その山林等が急傾斜地などであることにより、宅地造成が現実的に不可能(宅地への転用ができない)と認められる場合です。
もう1つは、宅地への転用が不可能というワケではないけれども、宅地にしようとしたらメチャクチャお金がかかる、という場合です。
宅地ベースで評価する場合には、宅地としての評価額から宅地造成費相当額をマイナスして計算します。
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マイナスして計算したら、純山林の評価額よりも安くなってしまったら、オカシイですよね。
評価額200万円の純山林があるとします。
宅地造成費900万円をかければ、1,000万円のきれいな宅地になるとします。
1,000万円の宅地になるとしても、持ち出し分(900万円お金が無くなる)を考えると損ですよね。
そんなこと(1,000万円の宅地を手に入れて、900万円失う、差引の財産は100万円)はフツウしません。
何もしないまま(200万円の純山林を所有)の方がいいですから。
つまり、市街化区域にあったとしても、宅地化が物理的に不可能な土地や、正気だったら宅地化しないような土地は、相続税の評価上もそもそも宅地ベースで評価しないんだから、地積規模の大きな宅地の評価も適用しない、ということです。
想う相続税理士