相続税専門税理士の富山です。
今回は、非上場株式(同族会社株式)を生前贈与する場合の留意点について、お話します。
非上場株式には価値がない?
知らない人に、「うちの会社の株(非上場株式・同族会社株式)を買ってくれよ」と言っても、ほとんどの場合、買ってもらえないでしょう(M&Aしたい人は別)。
買っても簡単には売れない(換金できない)からです。
上場株式のような市場がないのです。
ただし、株式を所有しているということは、その会社の「経営支配権」を有している、ということになります。
簡単に換金できないから価値がない、というワケではありません。
事業承継を考えた場合、後継者にその会社の株式を引き継がせることは絶対です。
絶対に引き継がせるということを考えると、相続の時まで待つのは危険(争族発生)な場合があります。
相続の発生と同時に、その亡くなった方の財産は、相続人の共有状態になります。
相続人間の話し合いがまとまらないと、その共有状態は解除されません。
つまり、後継者がスムーズに株式を引き継げない可能性があるのです。
そう考えると、生前に贈与しておいた方がいい(安心できる)場合もあります。
相続税が出なくても相続(争族)対策は必要
相続税が出るかどうかは関係ありません。
相続税が出なくても、後継者が経営支配権を握れるよう、どのように株式を移転するかを考える必要があります。
生前に贈与をすると、贈与税の課税対象になります。
相続税が出なくても、贈与により贈与税が出る(課税される)かもしれません。
相続税が出る場合でも、その将来の相続税に比べて安い贈与税の負担で済むのであれば、贈与をする、という考え方もあります。
また、贈与税の負担が(相続の時まで待って相続による移転を行い相続税を負担するのより)高い場合でも、経営支配権を確実に引き継がせる、という意味で、贈与を選択する場合もあるでしょう。
とはいえ(税金のことよりも経営支配権の確実な承継を第一に考えるとはいえ)、まずは相続税の試算を行い、その中で、非上場株式の評価をキチンと行いましょう。
非上場株式の評価をキチンと行えば、何株贈与するといくら贈与税が課税されるかが分かります。
課税方法の選択と贈与のタイミングがポイント
贈与税の課税方法には、暦年課税と相続時精算課税の2種類がありますが、相続時精算課税は原則として、節税効果がないため(贈与しても結局は相続税の課税対象となってしまうため)、まずは暦年課税による贈与を検討しましょう。
暦年課税による贈与を行う場合、1回の贈与額(株数)を増やすと、超過累進税率により税率が上がり、贈与税が高くなってしまうため、全体の評価額が高い場合には、長期間にわたり贈与することも視野に入れましょう。
ただし、株価が下がった場合には、(いつもに比べて多くの株数を暦年課税により贈与するのもいいのですが)相続時精算課税による贈与を検討しましょう。
相続時精算課税による贈与は、結局は相続税の課税対象になるとはいえ、(相続の時にまた株価が上がっていた場合に比べて)低い評価額課税(税負担)で株式を移転することができるからです。
また、通常、相続税の税負担率は、贈与税の税負担率よりも低いため、暦年課税に比べ、相続時精算課税の方が、低い税負担で株式を移転できる可能性があります。
想う相続税理士