相続税専門税理士の富山です。
今回は、ある裁決において、相続人の誰もが知らないと主張する死亡直前に引き出された4,000万円の現金が、相続税の課税においてどのように取扱われたか、ということについて、お話します。
相続直前に多額の出金があったら?
出典:TAINS(Z999-5168)(一部抜粋加工)
J18-4-01
昭和48年分相続税、昭54-06-21裁決
相続税の申告において、この4,000万円については関係させていない
相続人の全員がこの4,000万円については何も知らず、税務署に指摘されて初めて知ったと主張している
他があり得なければ消去法でアウト
当時被相続人あるいは、同会社において本件手持金のような大きな金額については、これを1度に費消するような支払原因は全く思い当らず、同会社の従業員等に対してもこのような大きな額の金員を支払うべき事情はなく、また支払った形跡もないものと認められる。
被相続人の預金払い戻しから相続開始までの間における被相続人の財産及び債務の異動状況についての当庁の調査及び当庁が原処分関係書類を調査したところによれば、次の事実が認められる。
A 新に資産を取得し、それに対する支払いをした事実は見当らないこと。
B 被相続人が当時高額物品の講入その他多額の支払を要する役務あるいはサービスを受けたような事実は見当らず、また、株式会社I及び被相続人が本件手持現金に相当するような負債を有していた事実は請求人は知らされておらず、かつ、その資産状況に照らし、そのような隠れた負債もないものと認められる。
C 本件手持現金について請求人の知らない相手方に貸付をした事実についてもその形跡は見当らないこと。
D 本件手持現金に相当するような租税公課等の支払いをした事実もないこと。
以上により、手持現金は申告した356,650円以外にはなかったとする請求人の主張は信用することができず本件手持現金は、相続開始時における手持現金と認めるのが相当であるから、請求人の主張には理由がない。
亡くなった時に、手許に現金が有ったということが直接証明できなくても、他(支払に充当されてお金が無くなった等)の可能性がないということになれば、現金があったと考えてもおかしくない、ということです。
想う相続税理士