相続税専門税理士の富山です。
今回は、過去の相続における未分割財産の取扱いについて、お話します。
相続登記されずに放置されている土地が日本全体で2割もある
所有者が分からない土地が社会問題となっています。
地域を守るための防災事業を行う際にも、そのような土地があると、足かせとなります。
問題解決のため、相続登記が義務化されます。
このような話を聞いて、他人事のようにお感じになるかもしれませんが、もしかしたら、あなたが今直面している相続税の申告にも、関係ある話かもしれません。
過去の相続の状況を確認することが必要
上記のような関係の親族がいるとします。
父Bさんがお亡くなりになり、子Cさんが相続税の申告をしなければなりません。
この場合、子Cさんは、まず父Bさんの名義になっている財産を調べて、評価し、申告しようとするでしょう。
土地の場合、父Bさんがご自分で購入したり、贈与により取得したことがなければ、通常は、祖父Aさんから相続により引き継いだものをお持ちのハズです。
→父B→子C
→伯父D→従兄弟E
上記のように、父Bさんには兄弟である伯父Dさんがいたとします。
祖父Aさんの相続の際、祖父Aさんは土地をお持ちでしたが、父Bさんと伯父Dさんの話し合いがつかず、土地がそのまま放置されているとします(祖父Aさんの相続人はこの2人のみ)。
このような場合、父Bさんは、祖父Aさんの土地の半分(父Bさんの法定相続分相当額)の財産を所有していることになります。
相続税法(一部抜粋)
第55条 未分割遺産に対する課税
その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第904条の2(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする。
ですから、父Bさんがご自分の名義の土地をお持ちでなくても、相続税の申告書に「土地」という財産が計上されることになります。
これを機に今から遺産分けできないかトライしてみる
何もしない状態であれば、上記でお話したとおり、未分割財産については法定相続分相当額を申告しなければなりません。
今から分割できないか検討してみましょう。
伯父Dさんがご健在であれば、「伯父Dさん」と「父Bさんの代襲相続人である子Cさん」で遺産分けの話し合いをするのです。
伯父Dさんも、土地が未分割のままだと、後々、自分の子供(従兄弟Eさん)にも迷惑がかかると思えば、話し合いに応じてくれるハズです。
伯父Dさんが土地を相続してくれることが決まれば、父Bさんの相続で、土地を申告する必要はありません。
逆に、父Bさんが土地を相続することになれば、法定相続分ではなく、土地が丸々相続税の申告対象となります。
伯父Dさんが既にお亡くなりになっている場合には、従兄弟Eさんとの遺産分けになります。
話し合いがすぐにまとまらなくてもOK
相続税の申告期限までに過去の相続に係る未分割財産の遺産分けが終わらなければ、最初にお話したとおり、法定相続分相当額を申告しなければなりませんが、そこであきらめる必要はありません。
その後、遺産分けが決まり、伯父Dさんが土地を相続してくれることが決まれば、法定相続分を申告した父Bさんの相続税申告は、「過大申告」ということになりますので、更正の請求により相続税を還付してもらえます。
逆に、父Bさんが土地を相続することになった場合には、法定相続分(半分)だけでなく、土地を丸々100%申告することになりますから、修正申告により追加の相続税を納めることになります。
相続税法(一部抜粋)
第55条 未分割遺産に対する課税
ただし、その後において当該財産の分割があり、当該共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつた場合においては、当該分割により取得した財産に係る課税価格を基礎として、納税義務者において申告書を提出し、若しくは第32条第1項に規定する更正の請求をし、又は税務署長において更正若しくは決定をすることを妨げない。
相続税法(一部抜粋)
第32条 更正の請求の特則
次の各号のいずれかに該当する事由により~過大となつたときは、更正の請求をすることができる。
一 第55条の規定により分割されていない財産について民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて課税価格が計算されていた場合において、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつたこと。
相続税法(一部抜粋)
第31条 修正申告の特則
第27条若しくは第29条の規定による申告書又はこれらの申告書に係る期限後申告書を提出した者は、次条第1項第1号から第6号までに規定する事由が生じたため既に確定した相続税額に不足を生じた場合には、修正申告書を提出することができる。
想う相続税理士