相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の税額控除を適用した際、控除不足額が生じた場合の取扱いについて、お話します。
未成年者控除・障害者控除は余りを扶養義務者から控除できる!
財産を取得した相続人の方が未成年だった場合、未成年者控除の適用を受けられる場合があります。
未成年者控除適用額が100万円で、その未成年の方の相続税が70万円だった場合、相続税から100万円控除できるのですが、相続税は70万円なので、70万円だけ控除して、その未成年者の方の相続税はゼロになります。
相続税が(未成年者控除適用額より)少なかったことにより控除できなかった30万円はどうなるのでしょうか?
相続税法(一部抜粋加工)
第19条の3 未成年者控除
2 前項の規定により控除を受けることができる金額がその控除を受ける者について第15条から前条までの規定により算出した金額を超える場合においては、その超える部分の金額は、政令で定めるところにより、その控除を受ける者の扶養義務者が同項の被相続人から相続又は遺贈により取得した財産の価額について第15条から前条までの規定により算出した金額から控除し、その控除後の金額をもつて、当該扶養義務者の納付すべき相続税額とする。
控除できなかった30万円は、その未成年の方の扶養義務者(配偶者、直系血族および兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の方)の相続税から控除できるのです。
想う相続税理士秘書
贈与税額控除は切り捨てられて終わり・・・
相続で財産を取得した方が、相続開始前3年以内(税制改正により順次延長され最終的には7年以内)に、亡くなった方から暦年課税による贈与により取得した財産がある場合には、その贈与財産も相続税の課税対象になります。
ただし、贈与の時に贈与税を納めていると、1つの財産に贈与税と相続税の2つの税金がかかることになってしまうため、相続税の計算において、贈与税を控除することができます(「贈与税額控除」と言います)。
納めた贈与税が100万円で、計算された相続税が70万円だとします。
相続税から100万円控除できるのですが、相続税は70万円なので、70万円だけ控除して、相続税はゼロになります。
相続税が(贈与税額控除適用額より)少なかったことにより控除できなかった30万円はどうなるのでしょうか?
この場合、未成年者控除・障害者控除のように、他の方の相続税から控除できる、というような取扱いはありません(30万円は切り捨てられて終わりです)。
相続時精算課税贈与による贈与税は還付される!
同じ贈与税でも、相続時精算課税による贈与に係る贈与税は、取扱いが違います。
その名のとおり、「相続」の「時」にちゃんと「精算」されます。
納めた贈与税が100万円で、計算された相続税が70万円だとします。
暦年課税による贈与と同様、100万円を70万円から差し引くのですが、相続税が(贈与税より)少なかったことにより差し引けなかった30万円は還付されます。
想う相続税理士
第8の8表「税額控除額及び納税猶予税額の内訳書」の方にその他の税額控除と一緒に集約されています。
見落として適用もれにならないよう、ご注意を。