通常の建物の評価は簡単
通常、建物は「固定資産税評価額×1.0」で評価します(貸している建物の場合には、さらにそこから、借家権割合相当額を控除します)。
この「固定資産税評価額」は、市町村役場が付けます。
春先に市町村役場から送られてくる、固定資産税の課税明細書に記載されている金額です。
でも、未完成の建物については、 固定資産税評価額が付けられていません。
工事の進捗割合を使って評価する
では、どうやって評価するかと言うと、財産評価基本通達には、次のように書かれています。
財産評価基本通達
(建築中の家屋の評価)
91 課税時期において現に建築中の家屋の価額は、その家屋の費用現価の100分の70に相当する金額によって評価する。
「100分の70に相当する金額」、つまり、七掛けして評価する、っていうのは、評価の安全性を確保するためです。
出来上がっていない建物を評価するんだから、画一的な計算で変に高くなっちゃマズい、ってことで、安めに評価していいことになっている訳です。
では、その前の「費用現価」とは何か、国税庁タックスアンサーを見てみると、
国税庁タックスアンサー
No.4629 建築中の家屋の評価
建築途中の家屋の評価額=費用現価の額×70%
この算式における「費用現価の額」とは、課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)までに建物に投下された建築費用の額を課税時期の価額に引き直した額の合計額のことをいいます。
とありますが、
建設会社との工事請負契約における請負金額×お亡くなりになった時点における工事進捗割合
で計算することが多いです。
ですから、「請負金額2,000万円」「工事進捗割合50%」であれば、
2,000万円×50%×70%=700万円
ということになります。
建築中の建物は亡くなった方のモノなの?
出来上がってもいない、使うこともできない、そんな建物について、700万円の財産として相続税を納めることになります。
これが、自分のモノにもなっていなければ、相続税を払うのはおかしい!という感じになりますが、亡くなった方が契約して建設会社に作ってもらっているモノなので、亡くなった方の自分のモノなのです。
自分のモノになっているのであれば、お金を払わなきゃダメ
中途半端(建築中)な資産とはいえ、これは亡くなった方のものです。
ということは、亡くなった方は、建設会社にお金を払わなければならない、ということになります。
上記の例だと、いくら払わなければならないのでしょうか?
2,000万円でしょうか?
それは、建物が完成して引渡を受ける時ですよね。
今回は半分出来上がっている(工事進捗割合50%)んですから、半分支払わなければならない、と考えます。
つまり、2,000万円×50%=1,000万円です。
お亡くなりになった時点で、亡くなった方が1円も払っていなければ、1,000万円払わなければならないのに払っていない、と考えられますので、建設会社に対して、1,000万円の未払金(債務)がある、と考えることができます。
この1,000万円は、債務控除できます。
相続税の計算をする際に、プラスの財産から控除できる、ということです。
建築中の建物と未払金だけ考えると、
700万円△1,000万円=△300万円
となりますので、他に財産があっても、そこから△300万円控除できる、つまり、建物の建築は、相続時点で完成していなくても、節税効果がある、ということですね。