相続税専門税理士の富山です。
今回は、無意識のうちに子供に贈与をしていることがある、ということについて、お話します。
代わりに払ってあげるのは贈与
親と子は、扶養義務の関係にありますので、子供が困っていれば、親が手を差し伸べようとするのは、当たり前かもしれません。
例えば、子供が社会人になって働いているけれども、学生時代の奨学金の返済が大変そうだ、ということで、その貸与された奨学金の残りを返済をしてあげる、または、住宅ローンを組んで子供が家を建てたけれども、毎月の返済が大変そうだ、ということで、そのローンの残債部分を返済してあげる、というようなことがあるかもしれません。
しかし、これらは本来は、そのお子さんが返済すべきものです。
親御さんが代わりにその返済をしてあげたり、その返済資金を子供に渡すということは、お子さんに対する「贈与」ということになります。
この贈与によりトクをするのはお子さんの方ですから、お子さんは、この贈与について贈与税を納める義務が生じます。
教育資金や住宅取得資金の贈与については、非課税の特例が設けられています。
また、扶養義務者(親など)からの生活費や教育費の贈与は、通常必要と認められる金額であれば、特例の適用を受けなくても、非課税となります。
「奨学金というのは過去の学費(教育費)を払うために借りたものなんだから、その返済を親がしてあげた(あげる)のは、非課税なのではないか?」と思われるかもしれません。
「住宅ローンについては住宅取得資金の非課税特例が設けられてるんだし、非課税にできるのでは?」と思われるかもしれません。
肩代わりするということはお金を贈与したのと同じこと
しかし、これらの奨学金や住宅ローンというのは、お子さんが自分で借りたものです。
ですから、その残債はお子さんの債務です。
その「債務」を代わりに負担してあげたのであり、教育費や住宅取得資金を負担したワケではありません。
もし、親が子供を経由せず、奨学金の返済や住宅ローンの返済をしたとしても、それによってトクをするのは、お子さんであり、その返済については贈与税の対象となります。
贈与が生じるのは借入金の返済だけじゃない
上記の奨学金や住宅ローン以外でも、贈与が生じる場合があります。
例えば、税金です。
子供が支払うべき税金を、親が代わりに支払った場合には、それは親から子に対する贈与になります。
子供がトクしていますからね。
また、親が子供にモノを安く売る場合も同様です。
時価1,000万円の土地を300万円で子供に売った場合、子供は、本来1,000万円を払うべきところを300万円にまけてもらっているワケですから、差額の700万円分トクしています。
これについても贈与税の対象となります。
想う相続税理士