相続税専門税理士の富山です。
今回は、遠い親戚の子の学費を負担してあげた場合、学費を負担してもらったその親戚の子に贈与税がかかるのか、ということについて、お話します。
親が子供の学費を負担しても贈与税を払っていないのはなぜ?
ご自分でお金を稼いで、そのお金で学校に通っている方もいると思いますが、ほとんどのお子さんは、親御さんにお金を出してもらって学校に通っているハズです(おじいちゃん・おばあちゃんがお金を出している場合もあるでしょう)。
子供が親に学費を出してもらう、ということは、親から子に贈与があったことになります。
でも、親御さんに学費を出してもらって、贈与税の申告をしているお子さんなんて、聞いたことがないんじゃないでしょうか?
この場合、贈与は贈与でも、「非課税贈与」なので、贈与税がかからないのです。
相続税法(一部抜粋)
第21条の3 贈与税の非課税財産
次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
親(や祖父母)は子供の扶養義務者に該当するため、教育費を贈与しても、それは「非課税」になるため、申告しなくてもいいのです。
扶養義務者の範囲はどこまで?
「扶養義務者」には、親や祖父母しかなれないのでしょうか?
相続税法には、その「扶養義務者」の定義がきちんと載っています。
相続税法(一部抜粋)
(定義)
第一条の二 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 扶養義務者 配偶者及び民法第八百七十七条(扶養義務者)に規定する親族をいう。
上記の民法877条を見てみます。
民法(一部抜粋)
(扶養義務者)
第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
さらに、通達にも規定があるので見てみます。
相続税法基本通達
1の2-1 「扶養義務者」の意義
相続税法第1条の2第1号に規定する「扶養義務者」とは、配偶者並びに民法第877条《扶養義務者》の規定による直系血族及び兄弟姉妹並びに家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族をいうのであるが、これらの者のほか三親等内の親族で生計を一にする者については、家庭裁判所の審判がない場合であってもこれに該当するものとして取り扱うものとする。
上記の相続税法・民法・相続税法基本通達の条文をまとめると、学費(教育費)を負担してももらった方が贈与にならない「扶養義務者」は、次の方になります。
- 配偶者(奥さん・旦那さん)
- 直系血族(父母や祖父母等・子や孫等)及び兄弟姉妹(同じ親から生まれた子)
- 家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族
- 生計一の三親等内の親族
遠い親戚の場合は結局どうなる?
上記の①②について、遠い親戚という感覚を持つ方は、あまりいないと思います。
③も、配偶者等に扶養能力がない等の特別なケースに一定の手続きで扶養義務者となっているため、遠い親戚という感じにはならないでしょう。
そうすると、遠い親戚が扶養義務者になれるのは、④のパターンと言えます。
④の「三親等内の親族」についてだけ考えると、上記②の直系血族・兄弟姉妹を除くと、「おじ」「おば」「おい」「めい」が該当します。
したがって、「おい」っこや「めい」っ子の方が、「おじ」さんや「おば」さんに学費(教育費)を負担してもらった場合で、その「おい」っこ・「めい」っ子・「おじ」さん・「おば」さんが生計一(お財布が一緒・日常の生活の資を共にする)の関係にある場合には、扶養義務者相互間の教育費の贈与、ということで、非課税になる、ということになります。
この場合、お財布が一緒の関係、ということですから、遠い親戚という感じではないハズです。
ということは、遠い親戚の学費(教育費)を負担してあげても、一般的には「扶養義務者相互間の非課税贈与」には該当しない、と言えるでしょう。
想う相続税理士