相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続により非上場株式を取得した後、その株式を発行会社に売却した場合の取扱いについて、お話します。
非上場株式は売れないし売っちゃダメ
非上場株式は、その会社の業績や財政状態が良かったりすると、相続税申告における評価額が高くなります。
評価額が高いと、その分、相続税も高くなります。
これが上場株式であれば、評価額や相続税が高くても、簡単に売却できるため、お金に換えることができ、相続税もその換えたお金で納めることができます。
しかし、非上場株式は、市場流通性がないため、簡単に売却できません。
また、売却してはいけないのです(普通は)。
通常、非上場会社は、親族が株式を100%所有することで、その会社に対する経営権や支配権を独占し、(その親族にとって)安定した経営をすることが可能になっています。
仮に第三者に株式を全部売却したら、その会社はその第三者のモノになってしまいます。
非上場株式を発行会社に売るメリット
相続が発生し、相続人であるあなたが、亡くなった方が全株所有していた非上場会社A社の株式を1,000株(全株)相続したとします。
上記でお話したように、(会社に対する経営権や支配権を手放してもいい、という場合を除き)この株式は外部に売れません。
しかし、売ってお金に換えないと相続税が払えない場合、どうすればいいのでしょうか?
納税資金を確保できる分だけ、そのA社の株式をA社に売るのです。
1,000株のうち、300株をA社に売却して、それで得た売却代金で相続税を納めるのです。
300株を売却しても、残りの700株(全株)を所有しています。
300株は、あなたが所有しているA社が所有しています(「金庫株」といいます)ので心配ありません(第三者が所有しているワケではありません)。
会社の経営権や支配権を手放さず、納税資金を得ることができます。
非上場株式を発行会社に売る場合の税制上の特例
非上場会社の株式を相続し、すぐにその株式を発行会社に売却したとしても、いったん相続したことには変わりません。
つまり、「相続」と「譲渡」(売却)という2つの行為をしており、それぞれの課税対象に税金(相続税・所得税)がかかります。
ただし、この場合、所得税については特例が用意されています。
相続税額を取得費に加算する特例
「譲渡所得」(非上場株式を売却した儲け)を計算する際、一定の要件に該当すれば、相続税の一部を経費にすることができます。
つまり、相続税を払った分、所得税が安くなります。
譲渡対価の全額を譲渡所得の収入金額とする特例
非上場会社の株式を発行会社に売却する際、発行会社から売却代金を受け取ります。
この「発行会社から受け取る売却代金」の中には、税務上「配当金」とみなされるモノが含まれる場合があります。
「配当金」は「配当所得」として課税されるため、所得税が高額になる場合があります。
しかし、一定の要件に該当すれば、この「配当所得」部分も「譲渡所得」として20.315%の所得税の課税でOKということになっています。
想う相続税理士