相続税専門税理士の富山です。
今回は、専門家が話している・書いているモノでも鵜呑みにしちゃダメ、ということについて、お話します。
国外にいる相続人が家なき子特例の適用を受ける場合
国外にいる親族の方が、亡くなった方のご自宅を相続で取得した場合、一定の要件を満たせば、「小規模宅地等の特例」を適用することができます。
小規模宅地等の特例のパターンの中に「家なき子特例」と言われるモノがあり、ザックリ言うと、持ち家のない親族(つまり「家なき子」)の方等が一定の要件に該当する場合に適用することができます。
以前、支部のDVD研修で、この家なき子特例に関して、「国外に家屋を持っている者は非同居親族に該当し、小規模宅地等の特例の適用が受けられることが判明した」(「家あり子」でも家なき子特例が使えた、けれども適用せずに申告してしまった)という失敗事例が取り上げられていました。
その失敗事例についての詳細がレジメにも書かれておらず、講師もサラッとしか話さなかったため、その当時、「こういう風に間違ったんだな」と自分なりに調べて結論付けたのですが、何となく気になり、レジメのその部分のページを破って保管していました(違和感がありました)。
間違った情報がそのまま伝えられる怖さを感じた
最近、その破って保管していたレジメのページを改めて見た時、その違和感がよみがえってきて、「そうだ、第一次情報に接してみよう」と思い、その事例集をネットで探しました。
そうしたら、何とお詫びの文章が出てきました。
(一部抜粋)
本事例は改正の経過措置を適用できる事例であり、当該税理士が経過措置の適用を見落としたため発生した事故になります。
現在は経過措置期間が終了しております。現行制度に沿わない事例を掲載し、会員の皆様の誤解を招くこととなりましたことをお詫び申し上げます。誠に申し訳ございません。
私はこの事例集を直接読んだワケではないので(お詫びの文章を見つけた後に、探して読んで確認しましたが)、ああそうなんだな、と思ったのですが、問題は支部の研修で使用したDVD教材です。
こちらのレジメには、経過措置の「経」の字もありません。
まあ、元の事例集においても、経過措置については触れられていないのですが(だからお詫びの文章が出たのですが)、そのDVDで講義していた税理士は、事例集からそのままコピペしたレジメの文章をサラッと読んで終わりだったのです。
読みながら「オカシイ」と思わなかったのでしょうか?
「説明しなくても経過措置絡みだということはDVDを見ている人は税理士なんだろうから分かるでしょ」ということなんでしょうか?
このレジメを読んで、「国外に家屋を持っている者は非同居親族に該当し、小規模宅地等の特例の適用が受けられる」なんて考えたら、間違った申告をすることになってしまいます。
自分が納得・理解できるまで確認しましょう
有名な税理士がしゃべっている・書いていることだから間違いない、ということはありません。
なぜそういう結論(取扱い)になるのか?という「根拠」をきちんと確認しましょう。
立花隆さんが本に書かれたりした「懐疑の精神」が重要です。
最終的に条文等を読んで「こうなっている(法律でこう決まっている)からしょうがない」ということはあるにせよ、「オカシイ」と思ったら、その気持ちを大事にしましょう。
想う相続税理士