相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続が発生した後、亡くなった方の生前の預貯金の動きを調べてみたら、相続人の口座にお金が動いていた、という場合の対応について、お話します。
「お金が動けば贈与」ではない
親族間で、特に親から子にお金が動くことはよくあります。
対価性がない(子が親に物やサービスの提供をしてその見返りとしてお金を受け取った、というワケではない)のであれば、贈与になると思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
民法(一部抜粋)
第五百四十九条(贈与) 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
「財産を無償で相手方に与える」(対価性がない)のが贈与なのですが、その意思の表示と受諾が贈与の成立要件になっています。
ですから、子供に内緒で贈与する、ということはできません。
贈与の意思表示ができない方から贈与を受けることはできません。
お金が動いていても、実質的に預けている(「預け金」)・貸している(「貸付金」)・名前を借りているだけ(「名義財産(名義預金等)」)という場合もあります。
生前に亡くなった方が預けている・貸している・名前を借りているだけなら、「預け金」・「貸付金」・「名義財産(名義預金等)」は相続税の課税対象となります。
生前贈与加算の対象なら贈与税の申告は不要?
相続開始前3年以内に、亡くなった方から相続で財産を取得した方に対する資産の移転があり、それについて、上記の贈与の成立要件に留意し、また、「預け金」「貸付金」「名義財産(名義預金等)」に該当しないかを検討したところ、贈与に該当するモノがあったとします(暦年課税の非課税枠110万円を超えているモノとします)。
「3年以内の贈与は相続税の課税の対象だから、今さら贈与税の申告はしなくていいんでしょ?」と思ったら大間違いです。
110万円の非課税枠を超えているのであれば、後からでも贈与税の申告(期限後申告)をしなければなりません。
また、納付した贈与税は相続税の計算の中で控除(「贈与税額控除」)できるのですが、金額によっては、精算しきれない場合もあります(例えば、贈与税を100万円納付したけれども、贈与財産を含めた財産にかかる相続税が70万円だった、という場合、贈与税をたくさん納めているため、相続税はゼロになりますが、差額の30万円は返ってきません)。
想う相続税理士秘書
贈与は贈与でも非課税の贈与もある
亡くなった方から相続で財産を取得した方に対する資産の移転があり、それについて、上記の贈与の成立要件に留意し、また、「預け金」「貸付金」「名義財産(名義預金等)」に該当しないかを検討したところ、贈与に該当するモノがあったとします(暦年課税の非課税枠110万円を超えているモノとします)。
3年以内ではなくても、非課税枠を超えているのであれば、後からでも贈与税の申告(期限後申告)をしなければなりません。
ただし、それが110万円の非課税枠を超えていても、非課税の贈与であれば、贈与税の申告は必要ありません。
相続税法(一部抜粋)
第21条の3 贈与税の非課税財産
次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
想う相続税理士