【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

遺産分割協議が完全にまとまる前に配偶者が解約された預貯金を自分の口座に入れたら?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、預貯金の相続について、お話します。


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民法及び家事事件手続法の改正により新設された預貯金の払戻し制度

亡くなった方の財産は、相続が発生した時点で、相続人全員の共有状態になります。

それは、預貯金についても同様です。

相続人が複数の場合、遺産分割協議が成立していないと、相続人の方が単独で金融機関に行って預貯金を下ろそうとしても、基本的には応じてもらえません。

しかし、それでは不便なこともあるため、遺産分割協議が成立していない状態でも、法律に基づき払戻しを受けることができる場合があります。

民法(一部抜粋加工)
(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
第九百九条の二 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす

 

家事事件手続法(一部抜粋加工)
(遺産の分割の審判事件を本案とする保全処分)
第二百条 家庭裁判所(第百五条第二項の場合にあっては、高等裁判所。次項及び第三項において同じ。)は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、財産の管理のため必要があるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てさせないで、遺産の分割の申立てについての審判が効力を生ずるまでの間、財産の管理者を選任し、又は事件の関係人に対し、財産の管理に関する事項を指示することができる。
2 家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、強制執行を保全し、又は事件の関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときは、当該申立てをした者又は相手方の申立てにより、遺産の分割の審判を本案とする仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。
3 前項に規定するもののほか、家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権(民法第四百六十六条の五第一項に規定する預貯金債権をいう。以下この項において同じ。)を当該申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に仮に取得させることができる。ただし、他の共同相続人の利益を害するときは、この限りでない。

この2つの制度を利用した場合、上記の太字の部分にあるとおり、その払戻金は、それを受け取った方のものになります。

では、上記の制度を利用せず、遺産分割協議が完全に成立していない状態で、特定の相続人、例えば、配偶者が預貯金の解約金を受け取り、自分の口座に入れたら、それはどのような取扱いになるのでしょうか?

配偶者が相続人代表して受け取った場合

配偶者が相続人代表として解約金を受け取った場合には、それは「いったん預かった」ということになりますので、配偶者が相続したものではない、ということになります。

遺産分割協議により、その真の受取人を決めることになり、それが配偶者以外の方だったら、配偶者はその方にその預貯金を渡す必要があります。

配偶者が財産の一部分割として受け取った場合

その金融機関の預貯金についてのみ遺産分割協議が成立し(成立したという内容の書類があり)、それに基づいて配偶者が解約金を受け取った場合には、それは当然、配偶者が相続したものということになります。

代償分割という方法がある

例えば、A銀行の普通預金1億円が、上記の「配偶者が相続したもの」になり、まあそれでいいか、と長男も思っていたところ、実は他に全然財産がない、ということが分かった場合、長男は全く財産を相続することができなくなってしまうのでしょうか?

このような場合には、代償分割で調整できる場合があります。

代償分割金として、配偶者が長男に5,000万円を「遺産分けの話し合いの中で」支払うのです。

これにより、配偶者と長男は1/2ずつ財産を相続することができます。

想う相続税理士

どのパターンで金融機関から払い戻しを受けたのか、きちんと確認しましょう。