相続税専門税理士の富山です。
今回は、来年から改正される相続時精算課税制度について、現時点での相続時の贈与財産の取扱いについて、お話します。
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受贈者は必ず相続税の納税義務者になる
相続時精算課税の適用を受けた受贈者は、その贈与者の相続の際、相続税の納税義務者に該当することになります。
相続税法(一部抜粋加工)
第1条の3 相続税の納税義務者
次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。
五 贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)により第21条の9(相続時精算課税の選択)第3項の規定の適用を受ける財産を取得した個人(前各号に掲げる者を除く。)
贈与財産は必ず相続税の課税対象になる
一般的に、相続税対策として贈与をするのは、贈与をすることにより相続税の課税対象を減らす(亡くなった時点において所有している財産、つまり相続財産を減らす)ためです。
しかし、相続時精算課税の適用を受けた贈与財産は、相続税の課税対象となるため、相続財産を減らす効果はありません。
この場合、相続時精算課税の適用を受けた受贈者が、相続で財産を取得したかどうかは関係ありません。
相続で財産を取得しても、取得しなくても、相続時精算課税の適用を受けた贈与財産は、相続税の課税対象になります。
相続税法(一部抜粋加工)
第21条の15
特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した相続時精算課税適用者については、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産で第21条の9(相続時精算課税の選択)第3項の規定の適用を受けるもの(第21条の2第1項から第3項まで、第21条の3、第21条の4及び第21条の10の規定により当該取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるものに限る。)の価額を相続税の課税価格に加算した価額をもつて、相続税の課税価格とする。
相続税法(一部抜粋加工)
第21条の16
特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかつた相続時精算課税適用者については、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産で第21条の9(相続時精算課税の選択)第3項の規定の適用を受けるものを当該特定贈与者から相続(当該相続時精算課税適用者が当該特定贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により取得したものとみなして第1節の規定を適用する。
贈与時の評価額で相続税を計算する
相続時精算課税の適用を受けた贈与財産は、相続税の課税対象になるのですが、いつの時点の金額で評価されるかというと、最終的に課税される相続の時点ではなく、贈与の時点です。
ですから、値上がりする前に財産を贈与すれば、同じ相続税がかかるのでも、値上がりする前の安い金額で相続税を計算できるため、相続の時までずっと所有していて値上がりした後の金額で相続税が計算されるのに比べると、相続時精算課税を選択した方が有利になります。
相続税法(一部抜粋加工)
第21条の16
3 第1項の規定により特定贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされて相続税の課税価格に算入される財産の価額は、同項の贈与の時における価額による。
贈与税は相続税の前払いと考える
相続時精算課税の適用を受けた贈与財産に、贈与税が課税された場合、その贈与税は相続税の前払いと考え、相続税を計算する時に控除します。
相続税法(一部抜粋加工)
第21条の15
3 第1項の場合において、第21条の9(相続時精算課税の選択)第3項の規定の適用を受ける財産につき課せられた贈与税があるときは、相続税額から当該贈与税の税額(第21条の8の規定による控除前の税額とし、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除く。)に相当する金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。
想う相続税理士