相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続における3つの基本的な対策と言われる「争族対策」「相続税の納税資金対策」「相続税の節税対策」のうち、「節税対策」について、お話します。
相続対策=相続税対策ではない
「相続対策」というと、「アパートを建てたりして相続税を安くするんでしょ?」というイメージがあるかもしれませんが、相続税を安くするのは「相続税対策(節税対策)」であり、相続対策の一部でしかありません。
相続税対策は最初に考えるべきではない
相続対策の中で一番重要な「争族対策」について考える相続対策の中で二番目に重要な「納税資金対策」について考える相続税対策よりも、上記の記事でお話した争族対策や納税資金対策の方が重要であり、相続税対策は最初に考えるべきモノではありません。
なぜでしょうか?
相続税を安くすることばかり考えると、争族になることがあるからです。
そして、争族になることにより、相続税が高くなってしまうことがあるからです。
例えば、相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があります。
仮に、財産の中に、評価額の高い土地イがあるとします。
この土地イを相続人Aさんに相続させ、上記の小規模宅地等の特例の適用を受けると、相続税が一番安くなるということがシミュレーションで分かったとします。
そこで、この土地イを相続人Aさんが相続で確実に取得できるよう、土地イを相続人Aさんに相続させるという内容の遺言を作成したとします。
相続が発生し、相続人Aさんが土地イを遺言により取得すると、相続人Bさんは「自分だけいい土地を先に遺言でもらっているなんてズルい!」と反発したとします。
そのため、土地イ以外の相続財産の遺産分けについて、相続人Aさんと相続人Bさんがモメてしまい、申告期限までに遺産分けができなかったとします。
この場合に、その残りの財産の中に小規模宅地等の特例を適用できる土地があり、小規模宅地等の特例を土地イについて適用することに相続人Bさんが同意しないと、土地イに小規模宅地等の特例は適用できません。
さらに、配偶者がいる場合だと、遺産分けがまとまらないことにより、配偶者が取得する財産が決まっていない状態になりますから、配偶者の税額軽減(配偶者が取得した相続財産については1億6,000万円までは必ず無税)も適用できなくなります。
結果として、特例が適用できない場合の高い相続税を負担せざるを得ない、ということになります。
想う相続税理士秘書
また、納税資金対策により、いくらのキャッシュが必要か、いくらまで税額を下げれば乗り切れるか、を検討していないと、どこまで節税をすればいいのか分かりません。
税制改正で節税が封じられる可能性がある
また、相続税対策として実行したことが、その後の税制改正で「ダメ」になることもあります。
現行の相続税に関する法律の仕組みを前提に対策をするワケですから、その仕組みが変われば、当てが外れてしまう可能性があります。
節税対策の考え方
まず検討すべきは生前贈与です。
そして、相続税の計算・財産評価の仕組みを理解した上で、お持ちの財産について、どのような対策を実行すれば節税効果が出るのかを考える必要があります。
特例は適用できるか、今、適用できなくても、適用できるような対応が可能か、評価額を下げることはできるか、どうやったら下がるか(時価と評価額の差が生まれるか)、どうやったら非課税の規定の適用を受けられるか、などについて検討しましょう。
想う相続税理士