相続税専門税理士の富山です。
今回は、将来の相続税の納税資金対策として、生命保険を活用する場合の基本的な考え方について、お話します。
相続はいつ発生するか分からないから
相続税の納税資金対策として生命保険を活用する、ということは具体的にどういうことかというと、相続が発生した場合に相続税がかかりそうだけれども、その場合には、生命保険に加入しておいて、それにより相続人の方などが生命保険金を受け取り、それを相続税の納税に充てられるようにする、ということです。
生命保険にもいろいろな種類があります。
保険料が安いのは「定期保険」です。
保険料は安い方がいいような気がしますが、定期保険はその名のとおり、保険期間が「定期」(一定期間)であるため、例えば、保険期間が10年の場合には、その10年の間に相続が発生した場合に生命保険金が支払われるようになっています。
逆に言うと、10年を超えて相続が発生した場合には、生命保険金が支払われません。
納税資金対策として生命保険に加入したのに、肝心の相続発生時に生命保険金が受け取れない、ということが起こり得るのです。
想う相続税理士秘書
逆に財産が増えて、相続税が増加することもあるでしょう。
このようなことを考えると、その名のとおり保険期間が「亡くなるまで」の「終身保険」の方が向いている、と言えます。
相続税の非課税枠を超える部分についての検討
親(推定被相続人)がご自分に終身保険をかけて、相続の際に子(相続人)が生命保険金を受け取ると、
500万円×法定相続人の数
で計算される「生命保険金の非課税枠」を適用することができます。
納税資金対策として生命保険に加入することには、このメリットもあります。
しかし、逆に言うと、これを超える部分については相続税が課税される、ということです。
納税資金対策として生命保険に加入するのであれば、できるだけ課税されないようにしたいものです。
このような場合には、課税される税金を相続税から所得税に変えることも検討しましょう。
親が親に保険をかけるのではなく、子が親に保険をかけるのです。
子が親に保険をかけるということは、子が保険料を負担することになるのですが、その保険料に充てるためのお金については、親から毎年、暦年課税贈与を受けます(贈与により財産が減少するため、相続税対策になる場合があります)。
このパターンだと、親の死亡により子に生命保険金が支払われると、子の「一時所得」として、所得税の課税対象になります。
国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.1750 死亡保険金を受け取ったとき
(1) 死亡保険金を一時金で受領した場合
死亡保険金を一時金で受領した場合には、一時所得になります。
一時所得の金額は、その死亡保険金以外に他の一時所得がないとすれば、受け取った保険金の総額から既に払い込んだ保険料または掛金の額を差し引き、さらに一時所得の特別控除額50万円を差し引いた金額です(50万円を差し引く前の金額が50万円より少ない場合は、一時所得は生じません。)。課税の対象になるのは、その金額をさらに2分の1にした金額です。
受け取った生命保険金の金額に対して所得税が課税されるのではなく、払い込んだ保険料や特別控除額50万円(ある意味「非課税枠」)を控除して、さらにそれを1/2した金額に対して所得税を計算することができるのです。
払込保険料や50万円の特別控除額を控除してゼロになれば、その生命保険金には所得税はかかりません。
所得税がかかる場合でも、2分の1課税により、課税が軽減されます。
想う相続税理士