【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

住宅取得等資金の非課税贈与は相続時精算課税を選択すると適用できない?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、住宅取得等資金の非課税贈与について、お話します。


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特別控除額は相続財産に加算されるが非課税枠は加算されない

相続時精算課税を選択した場合、令和6年分の贈与から新設された毎年110万円の基礎控除額の他に、2,500万円(こちらは毎年ではなく特定贈与者毎の金額です)の特別控除額を適用することができます。

基礎控除額110万円を超える贈与をしても、その超える部分が特別控除額(の使い残しの金額)に収まれば、贈与税はかかりません(期限内申告が要件です)。

贈与税はかからないのですが、その特定贈与者が亡くなった場合、その基礎控除額を超える部分については、相続税がかかります。

お父様からの贈与について、相続時精算課税を選択しているAさんが、マイホームを購入することになりました。

しかし、物価高の影響により住宅の金額が値上がりしているため、お父様に購入資金を援助して欲しい、と考えています。

Aさんは、お父様からの贈与については、相続時精算課税を選択しています。

住宅を購入するため、お父様から大きな金額の贈与を受けても、特別控除額2,500万円を適用できれば、贈与税は無税になるかもしれません。

しかし、お父様の相続の際に、相続税がかかってしまいます。

そんな折、住宅取得等資金の非課税贈与(「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」)という制度があり、この制度を使えば、省エネ等住宅なら1,000万円の非課税枠があり、その非課税枠適用部分は、相続の際に相続税がかからない、ということを知りました。

Aさんは、「相続時精算課税を選択しなければ、1,000万円の非課税枠を適用することができたのに・・・」とショックを受けました。

本当でしょうか?

相続時精算課税を選択していても住宅取得等資金の非課税贈与は適用できる

誤りやすい項目集(資産税関係)
令和6年12月
関東信越国税局 資産課税課(一部抜粋加工)
【誤り事例1】
甲は、令和2年に父から贈与を受けた財産について相続時精算課税制度を適用して申告していた。今回、令和6年に父から住宅取得等資金の贈与を受けて自宅を新築したため、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例(措法70 条の2)」の適用を受けたい旨を申し出たところ、過去に父からの贈与については相続時精算課税制度を選択していることから、この特例の適用を受けることはできない旨の指導を受けたため、この特例の適用を断念しようとしている。
⇒ 過去に相続時精算課税制度を選択している贈与者からの贈与であっても、この特例を適用することはできる。
【留意事項1】
「住宅取得等資金の非課税」は、過去に相続時精算課税制度を選択している贈与者からの贈与であっても他の要件を満たす場合には、適用することができます。
なお、「住宅取得等資金の非課税」を適用した財産は、非課税となることから、贈与者の相続開始時に相続税の課税価格に含める必要はありません。

何となく、住宅取得等資金の非課税贈与は、暦年課税を選択していないと適用できない、というような感じがするかもしれませんが、そんなことはありません。

相続時精算課税を選択していても、要件を満たしていれば、適用することができるのです。

住宅取得等資金の非課税贈与の非課税枠を超えた部分の取扱いは?

Aさんが、お父様から3,000万円の省エネ等住宅の購入資金の援助を受けたとします。

このうちの1,000万円は、要件を満たしていれば、住宅取得等資金の非課税贈与の非課税枠を適用することができます。

それを超える部分(2,000万円)については、相続時精算課税の基礎控除額110万円(特定贈与者が複数いる場合には贈与金額で按分)を適用し、さらにそれを超える部分については、相続時精算課税の特別控除額2,500万円(既に適用した分があればその残り)を適用することができます。

【その他留意事項】
1 「住宅取得等資金の非課税」の適用後の残額には、暦年課税にあっては基礎控除(110 万円)を適用することができ、また、相続時精算課税にあっては相続時精算課税に係る基礎控除(110 万円)の適用後の残額について特別控除(2,500 万円)を適用することができます。

想う相続税理士

住宅取得等資金の非課税贈与を適用することができれば、その分だけ、特別控除額を使わずに済みます(翌年以降に使える分が増えます)。