相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続財産の中に私道がある場合の、その評価方法について、お話します。
亡くなった方の不動産に係る固定資産評価証明書や固定資産税の課税明細書を元に、どんな所に土地を持っていたのか調べていくと、その土地が「道」になっている、ということがあります。
「道」はどのように評価すればいいのでしょうか?
財産評価基本通達(一部抜粋)
24 私道の用に供されている宅地の評価
私道の用に供されている宅地の価額は、11《評価の方式》から21-2《倍率方式による評価》までの定めにより計算した価額の100分の30に相当する価額によって評価する。この場合において、その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときは、その私道の価額は評価しない。
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袋小路になっている私道は原則として通常の評価額の30%評価
袋小路になっている私道、つまり、行き止まりになっていて、通り抜けられない私道は、通常、その道沿いに住んでいる方などの、「特定・少数」の方が通行の用に供しているハズです。
このような土地は、上記の通達の前半にあるように、「『通常の土地としての評価額』×30%」で評価します。
不特定・多数の方が通行の用に供している私道は評価しない
逆に(「特定・少数」の方ではなく)、「不特定・多数」の方が通行の用に供している私道は、財産性がない(もう公道のようになっていて処分が難しい)ため、評価しません(相続税はかかりません)。
先ほど、「袋小路になっている私道は原則として通常の評価額の30%評価」とお話しましたが、袋小路になっている私道でも、不特定・多数の方が通行の用に供している場合もあります。
そのような場合には、袋小路になっていても、評価はしません(相続税はかかりません)。
想う相続税理士秘書
国税庁HP・質疑応答事例(一部抜粋)
不特定多数の者の通行の用に供されている私道
「不特定多数の者の通行の用に供されている」例を具体的に挙げると、次のようなものがあります。
イ 公道から公道へ通り抜けできる私道
ロ 行き止まりの私道であるが、その私道を通行して不特定多数の者が地域等の集会所、地域センター及び公園などの公共施設や商店街等に出入りしている場合などにおけるその私道
ハ 私道の一部に公共バスの転回場や停留所が設けられており、不特定多数の者が利用している場合などのその私道
課税地目が「公衆用道路」で固定資産税が非課税だからといって「評価不要」ではない!
固定資産税の課税上、その私道の地目が「公衆用道路」となっていて、固定資産税が「非課税」になっていても、それをもって、その私道を「不特定・多数の方が通行の用に供している私道」と考えてよい、ということにはなりません。
「公衆用道路」で「非課税」だとしても、「特定・少数」の方が通行の用に供していれば、30%評価の私道として評価する必要があります。
出典:TAINS(Z255-10215)
A土地は、不特定多数の者が利用する公衆用道路であるから、相続税の課税価格の計算上の評価はないとする納税者の主張が、A土地は行き止まり道路であって、その利用者は専ら沿接地の関係者に限定されており、不特定多数の者が利用するいわゆる通り抜け私道や公共施設等の出入りに利用されているわけではないから、A土地が不特定多数の者の通行の用に供されているものということはできないとして排斥された事例
納税者らが相続した私道の固定資産税が非課税とされていることから相続税の課税価格の計算上もその評価はないものというべきであるとの納税者の主張が、固定資産税は、固定資産の所有及びこれに伴う使用収益の事実に着目して課される税であって、一方相続税は、人の死亡によって財産が移転する機会にその財産に対して課される税であるから、その課税の趣旨目的、課税主体も異なるものであり、固定資産税が非課税であることをもって同私道の相続税法上の課税価格の評価が当然に零となるということはできないとして排斥された事例
原告らは、本件私道が固定資産税の取扱い上も公衆用道路として非課税とされていることを理由に相続税の課税価格の計算上評価はないものというべきである旨主張する。
本件A土地について、評価通達24により、路線価により計算した価額の30パーセント相当とした被告の評価は不相当とはいえず、相続税の課税価格の計算上評価はないとする原告らの主張は採用できない。
想う相続税理士
そのような場合には、その固定資産税評価額は使用せず、私道ではないモノとした場合の固定資産税評価額を元に計算した相続税評価額の30%相当額で評価しますので、ご注意を。