【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

夫の相続の際に妻が管理してきた生活費の「余り」があったらどうなる?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、生活費の「余り」について、お話します。


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内助の功は誰の財産を増加させるのか?

旦那様が稼いで得たお金を奥様に渡し、奥様がそのお金を管理して、家族の生活費その他の支出に充てる、という夫婦のスタイルは、昔はよくありました(最近は変わってきているようです)。

これ自体は何の問題もありません。

税務上問題が起きるのは、その使い切らなかった「余り」が生じた場合です。

その「余り」は誰のモノでしょうか?

うまく余らせた奥様のモノでしょうか?

段階を踏んで考えてみる

まず最初に、旦那様がお金を稼いできます。

この時点では、間違いなく旦那様のお金です(旦那様が稼いできたんですから)。

このお金が奥様のモノになるとすれば、「奥様が旦那様から贈与によりお金をもらった」または「奥様が旦那様から給与の支払い受けた」というようなことになります。

奥様は贈与を受けたのでしょうか?

給与の支払いを受けたのでしょうか?

贈与が成立するための要件がある

民法(一部抜粋)
(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

贈与が成立するためには、旦那様が奥様に「あげるよ」と意思表示し、奥様が「ありがとう」とそれを受け入れる必要があります。

想う相続税理士

旦那様が亡くなった場合、過去のお金の動きについて、それが贈与に該当するかどうかが問題になることがありますが、その場合には、もっと論点が増えます。

余ったお金は贈与したことになるのでしょうか?

夫婦間で余ったお金を明らかにし、「あげるよ」「ありがとう」のやり取りをしたりするでしょうか?

夫婦は一心同体だから、そのようなやり取りがなくても、暗黙のうちに(心が通じ合って)贈与が成立している、ということにしてもらえるのでしょうか?

そのような税務上の特別な取扱いはありません。

奥様に給与を支払ったことにはならない

旦那様が個人事業主で、奥様がその旦那様が経営する事業に従事していれば、旦那様が奥様に給与を支払うことができる場合があります。

しかし、生活費のやりくりは、旦那様が経営する事業に従事していることにはなりません。

給与として認められるためには、税務署への届出書の提出や、確定申告書への記載等が必要となります。

想う相続税理士秘書

奥様のモノでないのであれば旦那様のモノ

「余り」がどんどん蓄積しているとします。

その「余り」は、上記でお話してきたように、奥様のモノではありません。

その状態で、旦那様が亡くなったとします。

その「余り」は、相続税の課税対象です。

旦那様のモノだからです。

それが、旦那様名義の預貯金口座にあろうが、奥様名義の預貯金口座にあろうが、現金としてタンスに保管されていようが、です。

税務署は、名義や形式を重視しません。

贈与税の非課税枠は関係ない

その「余り」が旦那様から奥様への贈与でなければ、1年間にその余りの増加分が110万円を超えたとしても、贈与税の申告をする必要はありません。

贈与ではないのですから、時効の話も出てきません。

想う相続税理士

その「余り」が奥様名義の預貯金口座に蓄積している場合、奥様名義の預貯金だから奥様のモノ、ということにはなりませんので、ご注意を(そのような亡くなった方ご本人の名義になっていないけれども、実質的に亡くなった方のモノである預金を「名義預金」と言います)。