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過去の空中権の売買は相続税評価額に影響を及ぼす
空中権の売買金額を相続税評価額にそのまま加減算しちゃダメ
空中権の売買があった場合、空中権を売った方のA土地(余剰容積率を移転している宅地)は相続税評価額が下がり、空中権を買った方のB土地(余剰容積率の移転を受けている宅地)は相続税評価額が上がる
空中権を売った方のA土地のザックリとした相続税評価額
A土地の通常の相続税評価額×(1△イ/ロ)
イ:空中権の売却金額
ロ:空中権売却前のA土地の時価
時価1億円の土地について4,000万円で空中権を売却したのであれば、40%(=4,000万円/1億円)価値が下がった、と考える
相続税評価額を40%減する
相続税評価額が8,000万円であれば、
8,000万円×(1△40%)=4,800万円
となる(8,000万円△3,200万円=4,800万円)
空中権を買った方のB土地のザックリとした相続税評価額
B土地の通常の相続税評価額×(1+ハ/ニ)
ハ:空中権の売却金額
ニ:空中権売却前のB土地の時価
時価5,000万円の土地について4,000万円で空中権を購入したのであれば、80%(=4,000万円/1億円)価値が上がった、と考える
相続税評価額を80%増する
相続税評価額が4,000万円であれば、
4,000万円×(1+80%)=7,200万円
となる(4,000万円+3,200万円=7,200万円)
空中権の有無の確認方法
空中権(余剰容積率)の移転形態としては、区分地上権や地役権、賃借権の設定契約によるモノ、余剰容積率利用権の売買契約によるモノ等がある
過去にこれらの契約等がなかったかを確認する
また、その土地に建っている建物が、隣接する土地に建っている建物と一体化しているような場合(1つの建物になっている、通路でつながっている等)には、その経緯(空中権の売買がなかったか)を確認する
上記の権利の設定が登記されている場合もあるので、全部事項証明書を確認する
建物を建築した際の許認可関係書類を確認する
空中権の売却に係る所得区分についての裁決例
出典:TAINS(J75-2-12)(一部抜粋加工)
平20-04-03裁決
請求人は、余剰容積移転のための対価として受領した金員について、所得税法第33条第1項の資産の譲渡に該当することから、譲渡所得として課税されるべきである旨主張する。
しかしながら、余剰容積移転の対価は、土地所有権の一部譲渡を意味するものではなく、移転側が、移転を受ける側に対して自己の土地を建築上利用させるために、その土地における建築上の利用制限を受けることに対する対価であると解するのが相当であることから、「土地を使用させる行為」に当たり、原則不動産所得に該当し、所得税法第33条かっこ書及び所得税法施行令第79条第1項に該当する場合に限り、譲渡所得として課税されることになる。
そうすると、本件余剰容積利用権は、建築基準法第86条第2項に規定する連担建築物設計制度の適用により容積率が事実上緩和されたことに基づいて発生したものであり、私法上の契約形態としては不作為地役権を設定する方式によっていることから、所得税法第33条かっこ書及び所得税法施行令第79条第1項のいずれにも該当せず、不動産所得と解するのが相当である。