相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税対策として生前贈与を進めていく場合に、相続時精算課税制度を選択した方いいご家庭について、お話しします。
相続税がかからないご家庭
相続時精算課税は、その名のとおり、「相続の時に課税が精算」される贈与税の課税方法です。
さらにいえば、相続の時に「相続税が課税」されて課税が完結します(精算されます)。
「精算される」というのはどういうことかというと、最終的には相続税が課税され、払った贈与税はその相続税の前払としての意味合いを持ち(払った贈与税の分だけ納付する相続税は少なくて済み)、前払相続税としての贈与税を払い過ぎている場合には、その還付もしてもらえる、ということです。
相続税がかからないご家庭の場合には、最終的に相続税ゼロで精算されますので、それまでに贈与税をいくら払おうが、その贈与税が全て還付されるということになります。
贈与税が全額還付されるワケですから贈与税の税負担はゼロ、そして相続税もかからないワケですから相続税の税負担もゼロ、つまり相続税がかからないご家庭においては、相続時精算課税による贈与をすれば、税負担なしで早期に財産を移転することができるのです。
相続税の実効税率が低いご家庭
贈与税の課税方法には、相続時精算課税の他に暦年課税というモノがあります。
実は、この暦年課税の方が節税効果を生みやすいのです。
なぜかというと、相続税の実効税率よりも低い実効税率で贈与をすれば、相続税の節税ができるからです。
例えば、相続税の実効税率が20%のご家庭の場合、実効税率15%で贈与ができれば、差額の5%部分の税金を節税できることになります(生前贈与により相続財産が減少することにより、最終的な相続税の実効税率が下がることから、生前贈与しなかった部分に対する税負担も減ります)。
この暦年課税の節税効果が効果を発揮するのは、実は財産が多い方です。
財産が多いからこそ、相続税の実効税率も高く、それよりも低い実効税率で贈与することにより節税効果が生まれます。
しかし、元々相続税の実効税率が低いご家庭の場合には、その低い実効税率よりもさらに低い実効税率で贈与をするということになると、贈与する財産の金額を小さくしなければならず、一度に多額の贈与ができません。
その分、長い期間をかけて贈与をしなければ、まとまった財産を贈与できないということになるのですが、暦年課税の場合には、相続で財産を取得した方が相続開始前3年(令和5年度税制改正よりこれが最高7年に延長されます)以内に贈与により取得した財産については、相続税が課税されますので、贈与をしても節税効果がなくなってしまいます。
これに対して相続時精算課税は、令和5年度税制改正により、令和6年分の贈与から新たに「基礎控除額110万円」が設けられました。
この基礎控除額以下の贈与であれば贈与税はかかりませんし、相続税もかかりません(その贈与が相続開始前3年以内等の相続直前になったとしても相続税が課税されません)。
ですから、確実に相続財産を減らしたい場合には、この精算課税を選択した方が有利と言えます。
相続時精算課税であれば、贈与が成立しさえすれば、相続直前まで非課税贈与が可能なのです。
要件を満たせば、お孫さんへの贈与にも適用できるため、子だけでなく孫にも贈与する(受贈者=もらう人を増やす)ことで、毎年の非課税贈与額を増やすこともできます。
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