相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続財産の中にアパートやマンション等の賃貸物件がある場合の、その敷地の評価上の注意点について、お話します。
貸家建付地の評価単位
国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.4603 宅地の評価単位
(5) 貸家建付地(貸家の敷地の用に供されている宅地をいいます。)を評価する場合において、貸家が数棟あるときには、原則として、各棟の敷地ごとに1画地の宅地とします。
土地Aの上に、アパートa・アパートb・アパートcが建っているとします。
この土地Aを評価する場合には、アパートa・アパートb・アパートcの敷地毎に(区切って)、貸家建付地として評価します。
土地A全体を1つの土地として評価することはできません。
土地A全体が1,000㎡以上に該当するからと言って、地積規模の大きな宅地の評価をすることはできません。
貸家建付地評価は賃貸割合を加味
通常の土地(自用地)に比べ、貸家建付地は、そこに住んでいる人の権利が発生するため、その土地の持ち主(地主)は、その土地を自由に使用・処分することができなくなります。
つまり、土地の価値が下がります。
それは、相続税申告における土地の評価においても同様で、通常の土地に比べると、安く評価します。
ただし、アパートの敷地になっているだけでは、安く評価できません。
実際に入居者がいなければ、すぐに自分で住むこともできるし、売却することもできるからです。
そこで、安く評価(貸家建付地評価)する場合には、入居している割合(賃貸割合)を加味します。
想う相続税理士
①:自用地としての価額
②:借地権割合
③:借家権割合
④賃貸割合
想う相続税理士秘書
サブリース契約は賃貸割合100%
サブリース契約とは、アパートのオーナーと入居者が直接賃貸借契約を結ぶのではなく、アパートのオーナーが不動産会社と賃貸借契約を結び(つまり、丸ごとアパートを不動産会社に貸し)、その不動産会社が入居者と賃貸借契約を結ぶ(不動産会社が借りたアパートを入居者に貸す)契約のことです。
この場合、入居者がゼロでも、アパートのオーナーにはお金が入ってきます。
不動産会社が借りているからです。
不動産会社が100%そのアパートを借りているので、(入居者がゼロでも)賃貸割合は100%で計算します。
サブリース契約に係る貸家建付地の評価単位
上記のアパートa・アパートb・アパートcを不動産会社にサブリース契約により貸し付ければ、土地A全体を1つの土地として評価することができるのでしょうか?
土地A全体が1,000㎡以上に該当すれば、地積規模の大きな宅地の評価をすることはできるのでしょうか?
出典:TAINS(F0-3-401)(一部抜粋)
A社に一括貸し後、転貸されている5棟の共同住宅の敷地である3筆の宅地について、各宅地の上に存する各共同住宅の賃借人であるA社の敷地利用権の及ぶ範囲は、各共同住宅の敷地ごとに及んでいるものと認められることから、各宅地は、共同住宅の敷地ごとに区分し、5区画の宅地として評価するのが相当であるとされた事例・平26-04-25裁決
上記の事例では、
5 本件契約は、本件契約書1通により本件各共同住宅5棟を一括して賃貸借契約が締結されたものではあるが、実態は、本件各共同住宅の棟ごとに締結された賃貸借契約を1通の契約書としたにすぎないと認められる。
6 本件各共同住宅は、その外観上相互に連結した箇所がないから、本件各共同住宅の各棟(本件A共同住宅ないし本件E共同住宅)は、構造上全体が一体のものであるとはいえず、各棟が独立した建物であったものと認められる。また、本件各共同住宅は、いずれも2階建ての建物であり、各階には3DK又は3LDKの間取りの住戸部分が2戸ずつあり、住戸ごとに賃貸(転貸)の用に供することができるものであったから、本件各共同住宅の各棟(本件A共同住宅ないし本件E共同住宅)は、例えば母屋と離れのように当該各建物が一体のものとして機能していた特段の事情があるとはいえず、各棟が独立して機能している建物であったものと認められる。
7 以上から、本件各宅地の上に存する本件各共同住宅の賃借人である賃借会社の敷地利用権の及ぶ範囲は、本件各共同住宅(本件A共同住宅ないし本件E共同住宅)の敷地ごとに及んでいるものと認めるのが相当である。
として、賃貸物件の建物の敷地毎に評価するのが相当、とされました。
想う相続税理士
評価単位の検討は、評価の入口です。
ここを間違うと、いくら奥行価格補正率や不整形地補正率をきちんと計算しても、正しい評価にはなりません。
何となくで評価に着手して、後で全部やり直しにならないよう、ご注意を。