【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

未分割財産が分割された場合の配偶者の税額軽減の真の適用期限

相続税専門税理士の富山です。

今回は、遺産分けの話し合いがまとまらなかったため、未分割の状態で相続税の期限内申告をした後、遺産分割協議が成立し、それに伴い配偶者の税額軽減を受ける場合の適用期限について、お話します。


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配偶者は亡くなった方の財産形成の最大の貢献者

配偶者の方は、亡くなった方の財産形成上の最大の貢献者です。

そこで、配偶者の方が相続で取得した財産については、

  1. 財産のうち配偶者の法定相続分(お子さんがいる場合には1/2)相当額
  2. 1億6,000万円
のいずれか「多い」金額まで相続税が無税になります。

「最低でも1億6,000万円」の非課税枠がある、ということです。

この特例を「配偶者の税額軽減」と言います。

未分割の相続財産には配偶者の税額軽減は適用できない

配偶者の税額軽減の適用を受けるためには、(当たり前ですが)配偶者が財産を取得しなければなりません。

「遺産分けの話し合いがまとまらない」という状況の場合には、「誰がどの財産を取得するか決まっていない(財産が分割されていない)」ということですから、「配偶者はちゃんと財産を取得していない」ということになります(相続人全員による共有の状態になります)。

このように相続財産が未分割の状態の場合には、配偶者の税額軽減の適用は受けられません。

相続財産が未分割でも相続税の申告は10ヶ月以内にしなければなりませんので、各相続人等が民法に規定する相続分または包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして相続税の計算をし、申告と納税をすることになります。

つまり、配偶者は「配偶者の税額軽減」の適用を受けずに申告と納税をするのです。

未分割の相続財産が分割された場合の配偶者の税額軽減の適用期限

未分割で一度申告しても、所定の手続きをし、その後で分割されれば、配偶者の税額軽減の適用を受けることができます。

相続税法(一部抜粋加工)
第19条の2 配偶者に対する相続税額の軽減
ロ 当該相続又は遺贈により財産を取得した配偶者に係る相続税の課税価格に相当する金額
前項の規定の適用については、その分割されていない財産は、同項第2号ロの課税価格の計算の基礎とされる財産に含まれないものとする。ただし、その分割されていない財産が申告期限から3年以内(当該期間が経過するまでの間に当該財産が分割されなかつたことにつき、当該相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該財産の分割ができることとなつた日として政令で定める日の翌日から4月以内)に分割された場合には、その分割された財産については、この限りでない。

上記は配偶者の税額軽減について規定した相続税法の条文の一部ですが、この「ただし書き部分(太字部分)」については、通達に次のように規定されています。

相続税法基本通達(一部抜粋加工)
32-2 法第19条の2第2項ただし書の規定に該当したことによる更正の請求の期限
法第19条の2第2項ただし書の規定に該当したことにより、同項の分割が行われた時以後においてその分割により取得した財産に係る課税価格又は同条第1項の規定を適用して計算した相続税額が当該分割の行われた時前において確定していた課税価格又は相続税額と異なることとなったときは、法第32条第1項の規定による更正の請求のほか通則法第23条の規定による更正の請求もできるので、その更正の請求の期限は、当該分割が行われた日から4月を経過する日と法第27条第1項に規定する申告書の提出期限から5年を経過する日とのいずれか遅い日となるのであるから留意する。

「相続税法第32条第1項」は、次のような内容です。

相続税法(一部抜粋加工)
第32条 更正の請求の特則
当該各号に規定する事由が生じたことを知つた日の翌日から4月以内に限り、更正の請求をすることができる。
一 分割されていない財産について、その後当該財産の分割が行われ、

未分割財産が分割された場合には、4ヶ月以内なら更正の請求という手続きにより配偶者の税額軽減の適用を受けることができる、と規定しています。

「国税通則法第23条」は、次のような内容です。

国税通則法(一部抜粋)
第23条 更正の請求
当該申告書に係る国税の法定申告期限から5年以内に限り、更正をすべき旨の請求をすることができる。
一 当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたこと又は当該計算に誤りがあつたことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があつた場合には、当該更正後の税額)が過大であるとき。

法定申告期限から5年以内なら更正の請求という手続きにより配偶者の税額軽減の適用を受けることができる、と規定しています。

「相続税法第32条第1項」「国税通則法第23条」では、更正の請求の期限が異なります。

未分割財産が分割されたケースについては、「相続税法第32条第1項」に列挙されていて、「4ヶ月」と書かれていますので、分割から4ヶ月を経過してしまったら、更正の請求はできない(配偶者の税額軽減の適用はできない)と思われるかもしれません。

しかし、この配偶者の税額軽減は、そもそも「国税通則法第23条」による更正の請求の適用対象となっています。

ですから、分割から4ヶ月を経過してしまっても、法定申告期限から5年以内なら、まだ更正の請求が可能です(上記の通達は、この点に注意するよう定められています)。

想う相続税理士

まとめますと、「分割から4ヶ月を経過する日」「相続税の申告期限から5年を経過する日」のいずれか「遅い日」が、更正の請求により配偶者の税額軽減の適用を受ける場合の真の期限となります。