想う相続税理士
配偶者居住権における配偶者の居住要件と「居住建物」の捉え方
被相続人(亡くなった方)の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において
とあるように、配偶者が居住していたことが要件となる
夫と妻が別居していて、夫の死亡に伴い、夫の住んでいた(妻が住んでいなかった)ご自宅に配偶者居住権を設定する、ということはできない
ただし、別居していても、例えば、居住用不動産Aと居住用不動産Bを夫が所有していて、居住用不動産Aには夫が居住し、居住用不動産Bには妻が居住していたという場合、居住用不動産Bは「『配偶者』が『被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合』」に該当するため、配偶者居住権を設定できるモノと思われる(夫婦の同居は要件となっていないため)
また、配偶者が入院等をしていたことにより実際に居住していなかった場合でも、一定の要件に該当すれば、配偶者居住権は設定できるモノと思われる
「居住していた」とは、住民票がそこにある、という意味ではなく、実質的に生活の本拠がそこにある、という趣旨と思われる
その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する
とあるが、この「全部」には注意が必要である
国税庁HP・「配偶者居住権等の評価に関する質疑応答事例」について(情報)(一部抜粋)
5 配偶者居住権の評価額の計算の基礎となる金額
配偶者居住権は、民法上、居住建物の全部に及ぶこととされているところ(民法 1028①)、居住建物の一部が貸し付けられている場合には、配偶者は相続開始前からその居住建物を賃借している賃借人に権利を主張することができない(対抗できない)ため、実質的に配偶者居住権に基づく使用・収益をすることができない部分を除いて評価する必要がある
居住建物の一部が賃貸用の場合には、相続税の申告においては、床面積按分する
15 居住建物が店舗併用住宅である場合
居住建物の一部が賃貸用の場合には、当該賃貸部分を除いた居住建物の時価又はその敷地の時価が、配偶者居住権又は敷地利用権の評価額の計算の基礎となる金額となります。これは、相続開始前から居住建物を賃借している賃借人に対し、配偶者が権利を主張することができないため、実質的に配偶者居住権に基づく使用・収益をすることができない部分を除いて評価するものです。
設例のように、居住建物の一部が事業用である場合、当該事業用部分については、前述の賃貸部分とは異なり、配偶者が配偶者居住権に基づく使用・収益をすることが可能です。こうしたことから、相続税法上も、居住建物の事業用部分を配偶者居住権や敷地利用権の評価額の計算の基礎となる金額から除くこととはされていません。そのため、居住建物の時価又はその敷地の時価が、配偶者居住権又は敷地利用権の評価額の計算の基礎となる金額となります。
ただし、建物の一部が(「貸付用」ではなく)「事業用」となっている場合には、(居住建物の一部が貸し付けられている場合と同じく)建物全部が居住の用に供されていない場合でも、配偶者居住権は建物全部に成立し得る