相続税専門税理士の富山です。
今回は、路線価の設定されていない道路(A道路)のみに接している宅地を評価する際、税務署に特定路線価の設定の申出をせず、その道路(A道路)に接続する路線(B道路)に設定された路線価に基づいて計算したところ、それが認められなかった(税務署がA道路に特定路線価を設定して宅地を評価し、更正処分を行ったのは適法であるとされた)事例について、お話します。
評価対象地が路線価の設定されていない道路のみに接している場合
相続税の申告において路線価地域に所在する土地を評価しようとしたら、接している道路に路線価が設定されていなかった、ということはたまにあります。
この場合、
B道路を正面路線として、そのB道路の路線価(接続路線価)を基に評価する
接続路線価を基に評価する方法が認められなかった事例
出典:TAINS(F0-3-755)(一部抜粋加工)
審査請求人らが、路線価の設定されていない道路(本件2項道路)のみに接している宅地(本件土地)について、財産評価基本通達(評価通達)に定める特定路線価の設定の申出をせず、当該道路に接続する路線に設定された路線価(本件接続路線価)に基づいて評価し、相続税の申告をしたのに対し、原処分庁が、当該宅地は特定路線価に基づいて評価するべきであるとして、当該道路に特定路線価(本件特定路線価)を設定し評価して原処分を行ったことから、審査請求人らが当該評価を不服として原処分の全部の取消しを求めた事案
評価通達では、路線価の設定されていない道路のみに接している路線価地域内の宅地の評価方法としては、①接続路線価に基づく方法と②特定路線価に基づく方法との二つがあることとなる。接続路線価に基づく方法は、本来、接続路線に面する宅地を評価する方法であるから、評価しようとする宅地と接続路線との位置関係が近い場合には相応の合理性が認められるものの、その位置関係が遠くなるほど合理性は逓減する評価方法といわざるを得ない。一方、特定路線価に基づく方法は、特定路線価が、これを設定しようとする道路の接続路線及び当該道路の付近の路線に設定されている路線価を基に、当該道路の状況、評価しようとする宅地の存する地区の別等の各比準要素を考慮して評定されるものであることから、評価しようとする宅地の価額とその付近の路線に接する宅地の価額とのバランスを失することのないように評価することのできる、より合理的な評価方法である。
路線価の設定されていない道路のみに接している路線価地域内の宅地の価額は、当該道路に特定路線価が設定されている場合には、その特定路線価の評定において不合理と認められる特段の事情がない限り、特定路線価に基づく方法により評価すべきである
特定路線価が設定されたら、よっぽどのことがない限り、特定路線価を基に評価することになります。
納税者ではなく、税務署が設定した場合でも同様です。
特定路線価よりも接続路線価を基に評価した方が相続税評価額が安くなる傾向にあるのですが、接続路線価を基にした評価はどの程度(の安さ)なら認められるのでしょうか?
その明確な基準はありません。
しかし、「評価しようとする宅地と接続路線との位置関係が近い場合には相応の合理性が認められる」とあるように、評価対象地が接続路線価から見てあまり奥まっていない場合には認められる可能性が高くなる、ということになります。
どっちが原則?
特定路線価を基に評価するのと、接続路線価を基に評価するのでは、どちらが「原則」なのでしょうか?
税務署側の主張
路線価の設定されていない道路のみに接している宅地の価額は、原則として、接続路線価を基に画地調整を行って評価することとなるが、このように評価することが実情に即さない場合には、税務署長は、評価通達14-3の定めにより、納税義務者からの申出等に基づき特定路線価を設定することができ、当該宅地の価額は、特定路線価に基づき評価することとなる。
納税者側の主張
路線価の設定されていない道路のみに接している宅地の価額は、接続路線価を基に画地調整を行って評価するのが原則であり、そのように評価することが実情に即していない場合に特定路線価を設定することができるとされている。
「原則は接続路線価を基に評価」という点では両者の主張が一致しています。
しかし、原則による評価額が合理的ではない(安過ぎる)場合には、例外で評価すべき、ということになります。
想う相続税理士