相続税専門税理士の富山です。
今回は、特別縁故者の方が相続で財産を取得した場合の、相続税申告における留意点について、お話します。
想う相続税理士秘書
出典:TAINS(相続事例707456)
東京国税局課税第一部 資産課税課 資産評価官 「資産税審理研修資料」
特別縁故者って誰?
特別縁故者とは、ザックリ言うと、文字通り、亡くなった方と特別なつながり・関わり合いがあった方で、亡くなった方の財産を相続で取得する方がいない場合に、財産を請求できる方のことです。
裁判所HP(一部抜粋加工)
特別縁故者に対する相続財産分与
1. 概要
相続人の存否が不明で家庭裁判所により相続財産清算人が選任された場合において、家庭裁判所の相続人を捜索するための公告で定められた期間内に相続人である権利を主張する者がなかった場合、相続財産清算人が被相続人(亡くなった方)の債務を支払うなどして清算を行った後、家庭裁判所は、相当と認めるときは、被相続人と特別の縁故のあった者の請求によって、その者に、清算後残った相続財産の全部又は一部を与えることができます。
上記の「被相続人(亡くなった方)と特別の縁故のあった者」とは、
民法(一部抜粋)
(特別縁故者に対する相続財産の分与)
被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者
です。
相続税の申告はいつまでにやらなければならない?
相続税の申告期限は、財産の分与があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内となります。
「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」ではありません。
相続税法(一部抜粋加工)
第29条 相続財産法人に係る財産を与えられた者等に係る相続税の申告書
第4条第1項(「下記条文参照」)に規定する事由が生じたため新たに第27条第1項に規定する申告書を提出すべき要件に該当することとなつた者は、同項の規定にかかわらず、当該事由が生じたことを知つた日の翌日から10月以内に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
相続税法(一部抜粋加工)
第4条 遺贈により取得したものとみなす場合
民法第958条の2第1項(特別縁故者に対する相続財産の分与)の規定により同項に規定する相続財産の全部又は一部を与えられた場合においては、その与えられた者が、その与えられた時における当該財産の時価に相当する金額を当該財産に係る被相続人から遺贈により取得したものとみなす。
財産はいつの時点で評価する?
令和5年に相続があり、令和6年に財産の分与があった場合、令和6年の時点における相続税評価額で相続税の申告をします。
路線価地域にある土地であれば、令和5年の路線価図を使うのではなく、令和6年の路線価図の路線価で計算します。
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入院費用や葬式費用を負担していたら債務控除可能?
相続税法基本通達(一部抜粋)
4-3 相続財産法人から与えられた分与額
民法第958条の2の規定により、相続財産の分与を受けた者が、当該相続財産に係る被相続人の葬式費用又は当該被相続人の療養看護のための入院費用等の金額で相続開始の際にまだ支払われていなかったものを支払った場合において、これらの金額を相続財産から別に受けていないときは、分与を受けた金額からこれらの費用の金額を控除した価額をもって、当該分与された価額又は特別寄与料の額として取り扱う。
特別縁故者の方が、亡くなった方の入院費用や葬式費用を負担していた場合には、上記にあるとおり、分与を受けた財産の金額から直接その費用を控除します。
つまり、債務控除として申告するのではない、ということです。
特別縁故者の方は、相続人・包括受遺者に該当しないため(「特別縁故者の方=相続財産法人から財産の分与を受けた方」です)、債務控除は適用できません。
いつの税制が適用される?
令和5年に相続があり、令和6年に財産の分与があった場合、令和5年の税法が適用されます。
上記の「相続税法第4条」に「遺贈により取得したものとみなす」とあります。
遺贈であれば、財産の取得時期は相続開始日になります。
つまり、「『相続があった年=令和5年』の税制が適用される」ということになります。
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