相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続で取得した土地の中に、一体利用されている単独所有地と共有地がある場合におけるその評価単位について、お話します。
共有地は自分勝手に使ったりできない
相続人Aが相続により取得した土地の中に、隣り合った2筆の土地があり、片方(宅地①)は相続人Aが100%相続により取得し、もう片方(宅地②)は相続人Aが50%共有で相続した(残りの50%は相続前から相続人Bが取得していた)場合、相続人Aは、宅地②を使ったり、貸したり、売ったりしようとするときに、相続人Bの意見を聞き、相続人BがOKと言わないとそれらを実行できません。
それに対して、宅地①は相続人Bのような人がいないため、自分で勝手に使ったり、貸したり、売ったりすることができます。
このように、土地の性質(権利関係)が違うため、宅地①と宅地②は隣り合っている同じ「宅地」でも、原則として、別々に評価します。
相続前も相続後も一体利用されていたら1つの土地っぽくない?
宅地①と宅地②を相続前から貸していて、その上には賃借人が建物を建てていて、相続後もその状態が継続すると認められる場合(賃借人に「相続があったから建物を壊して出ていけ」とはなかなか通常は言えません)、権利関係はあまり関係なくなります(使ったり、貸したり、売ったりの意見の対立なんかないため、貸し続けるため)。
そうすると、別々に分けて評価することに合理性がなくなります。
単独所有地と共有地の一体評価が認められたケース
単独所有地と共有地を一体評価すべき、とした事例があります。
出典:TAINS(J89-4-15)
相続人の一人が遺産分割により取得し同族会社に一括貸ししていた単独所有地及び共有地の評価単位は、全体を一画地として評価するのが相当とした事例(平成21年7月相続開始に係る相続税の更正の請求に対してされた更正をすべき理由がない旨の各通知処分並びに各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・全部取消しほか・平24-12-13公表裁決)
相続人の一人が遺産分割により取得した単独所有地及び共有地(いずれも立体駐車場の敷地)について、当該共有地が、遺産分割の前後を通じて当該単独所有地と同一の用途に供される蓋然性が高いと認められる場合には、共有地であることによる使用等の制約は実質的には認められないから、当該単独所有地と区分して評価する必要はない
本件各雑種地は、堅固な立体駐車場の敷地として一括で貸し付けられ、一括して貸付けの用に供されていたことなどから、当該相続に係る遺産分割後も同一の用途に供される蓋然性が高いと認められる状況にあり、一部が共有地であることによる使用、収益及び処分の制約が実質的にないものと認められ、その利用状況、権利関係等から、全体を一つの評価単位により評価すべきである
想う相続税理士