相続税専門税理士の富山です。
相続税の申告の際、「亡くなった方」または「亡くなった方と生計を一にしていた親族」の「居住用」または「事業用」の宅地等については、一定の要件を満たせば、評価額を減額して申告することができます。
これを「小規模宅地等の特例」と言います。
今回は、相続財産である太陽光発電設備の敷地が、この小規模宅地等の特例の適用対象になるかどうか、ということについて、お話します。
雑種地だから適用不可?
太陽光発電設備の敷地は、通常、その地目は「雑種地」になるものと思われます。
建物の敷地ではないですからね。
太陽光発電設備は、一般的には「機械装置」に該当します。
財産評価基本通達(一部抜粋)
7 土地の評価上の区分
地目の判定は、不動産登記事務取扱手続準則第68条及び第69条に準じて行う
とされており、
不動産登記事務取扱手続準則(一部抜粋)
(地目)
第68条
三 宅地 建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地
と規定されていますので。
そうすると、「宅地」に該当しないから、「小規模『宅地』等の特例」は適用できないのでしょうか?
小規模宅地等の特例について定めている法律を見てみると、
租税特別措置法(一部抜粋)
第69条の4 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
宅地等(土地又は土地の上に存する権利をいう。)で財務省令で定める建物又は構築物の敷地の用に供されているもののうち政令で定めるもの
とありますので、「建物又は構築物の敷地の用に供されている」「土地」なら可能性がある(大丈夫)ということです。
更地の上に太陽光発電設備が設置されている場合には、(それが建物や構築物に該当しない限り)適用は不可、ということになります。
ただし、その敷地が、アスファルトやコンクリートで舗装されている場合はどうでしょうか?
一般的に、アスファルト舗装やコンクリート舗装は「構築物」に該当しますので、「構築物の敷地の用に供されているもの」の要件を満たし得ます。
「満たし得ます」と言うのは、それでOKというワケではないからです。
該当するとすれば「特定事業用宅地等」
小規模宅地等の特例の適用パターンは、「特定居住用宅地等」「特定事業用宅地等」「特定同族会社事業用宅地等」「貸付事業用宅地等」の4パターンです。
太陽光発電設備の敷地が該当するとすれば、特定事業用宅地等です。
この特定事業用宅地等に該当するためには、
租税特別措置法第69条の4(一部抜粋)
事業(不動産貸付業その他政令で定めるものを除く。)の用に供されていた宅地等
である必要があり、不動産貸付業と合わせて「ダメ!」(その場合には適用不可)と定められている事業は、
租税特別措置法施行令第40条の2(一部抜粋)
7 法第69条の4第3項第1号及び第4号に規定する政令で定める事業は、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業とする。
であり、この中に出てくる「準事業」とは、
租税特別措置法施行令第40条の2(一部抜粋)
事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うもの(第7項及び第19項において「準事業」という。)
です。
つまり、太陽光発電による電力を電力会社に売却しているだけではダメで、それが(「準事業」ではなく)「事業」に該当する必要があります。
その上で、アスファルト舗装なり、コンクリート舗装なり、またはそれ以外の太陽光発電設備を設置するための下部構造が「構築物」と言えるのかという判断が伴うということです(その下部構造と太陽光発電との一体性等も考慮する必要があるものと思われます)。
想う相続税理士