【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

「ヘソクリ」に対する税務(相続税)上の考え方(税務署の見方)

相続税専門税理士の富山です。

今回は、旦那さんに相続があった場合の相続税申告において、奥様の「ヘソクリ」がどう取扱われるか、について、お話します。


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「ヘソクリ」とは?

「ヘソクリ」とは、一般的に、奥様が旦那さんから家計を任される際、そのお金をやりくりしながら、奥様が自分で使うために、旦那さんに内緒で貯めたお金のことを言います。

奥様の努力の結晶ですので、感覚的には「奥様のモノ」という感じがするかもしれませんが、本当にそうなのでしょうか?

税務署は「ヘソクリ」をこう見る

「ヘソクリ」という言葉が裁決書に出てくる事例をご紹介します。

出典:TAINS(J74-4-18)
被相続人の妻名義及び子名義の預貯金及び有価証券がその管理状況及び原資等から相続財産であると認定した事例

(一部加工)
相続財産である預貯金等の帰属については、一般的にはその名義人に帰属するのが通常であるが、預貯金等は、現金化や別の名義の預貯金等への預け替えが容易にでき、親が子供の名前を使用して預金することや形式上の名義を家族に移転する等のことが世上行われることも稀ではないことから、単に名義人が誰であるかという形式的事実のみにより判断するのではなく、その原資となった金員の出捐者、その管理・運用の状況、贈与の事実の有無等を総合的に勘案して預貯金等の帰属を判断するのが相当である。
そして、その帰属の判断に当たり特に重要な要素となる、原資となった金員の出捐者の判断は、その預貯金等の設定当時における、名義人及び出捐者たり得る者の収入並びに資産の取得・保有状況等を総合的に勘案するのが合理的である。

(一部加工)
請求人らは、妻Lは婚姻前から預貯金を所有し、被相続人の給与から生活費として費消して残った金額(いわゆるヘソクリ)を蓄え、被相続人了解のもと、預貯金等を形成したと主張する。
しかしながら、妻Lは婚姻時に持参金がない上、夫婦間において、家庭生活を妻に委任し、その費用を妻に渡すことや一定の預貯金の管理運用を妻に任せることはあり得ることであり、その事実をもって任された妻の財産になるわけでもない。本件預貯金等の原資は被相続人が稼得した所得から賄われていたものであることや、その管理運用の状況等を併せ考えると、本件預貯金等の帰属は、被相続人にあったということができ、他に請求人らの主張を裏付ける証拠はないから請求人らの主張は採用できない。

夫婦間の贈与は実は難しい

同じ財布で生活している夫婦間で(例えば旦那さんが奥様に)お金を「贈与」するということは、その贈与されたお金は旦那さんの管理支配から解き放たれ、完全に奥様のモノになっていて、奥様が散財しようが旦那さんは文句を言わない状態ということになります。

支え合って生活している夫婦で、そのようにお金を区切るのは難しい面があります。

夫婦間の「以心伝心」は税務署に通用しません。

実際に夫婦間で贈与をするのであれば、後で(単にお金が移転した、ということではなく)本当に贈与があった、ということを明らかにできるようにしておきましょう。

想う相続税理士

家計のやりくりを頑張って、生前、旦那さんを一生懸命支えた奥様であればあるほど、その「ヘソクリ」はその頑張りの対価なのだから自分のモノだ、と思われるかもしれませんが、奥様が「これは私の名義になっています。だから、亡くなった夫の相続財産ではありません」と言っても、税務署には通用しませんので、ご注意を。