相続税専門税理士の富山です。
今回は、夫婦の同時死亡があった場合の生命保険金の受取人についての判決事例について、お話します。
同時に死亡したモノと推定する
BさんはAさんが亡くなった時に相続人になる方(推定相続人)であるとします。
事故などでAさんとBさんがお亡くなりになった場合、どちらが先に亡くなったかにより、相続の流れが変わります。
しかし、事故などの場合、どちらが先に亡くなったかが分からないこともあります。
そのような場合には、「同時死亡」と考えます。
民法(一部抜粋)
第六節 同時死亡の推定
第三十二条の二 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。
夫婦の同時死亡の場合
出典:TAINS(Z999-5151)(一部抜粋加工)
最高裁判所(第三小法廷)平成21年(受)第226号死亡給付金等請求、民訴法260
条2項の申立て事件(棄却)(確定)
平成21年6月2日判決
(1) Aは、被保険者をA、保険金受取人を同人の妻であるBとして生命保険契約を締結した。
(2) AとBの両名が、一方が他方の死亡後になお生存していたことが明らかではない状況で死亡した。AとBとの間には子はなく、Aの両親及びBの両親は、いずれも既に死亡していた。Aには弟であるC以外に兄弟姉妹はおらず、Bには兄である被上告人以外に兄弟姉妹はいない。
上記のような夫婦の同時死亡があった場合、奥様が受け取るべきであった生命保険金は誰が取得することになるのでしょうか?
指定受取人の相続人が受取人になる
夫婦ですから、お互いが相手の相続の際には相続人になります。
同時死亡により、それぞれが相手の相続人になるのでしょうか?
判示事項
1 商法676条2項の規定は、保険契約者と指定受取人とが同時に死亡した場合にも類推適用されるべきものであるところ、同項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」とは、指定受取人の法定相続人又はその順次の法定相続人であって被保険者の死亡時に現に生存する者をいい(最高裁平成2年(オ)第1100号同5年9月7日第三小法廷判決・民集47巻7号4740頁)、ここでいう法定相続人は民法の規定に従って確定されるべきものであって、指定受取人の死亡の時点で生存していなかった者はその法定相続人になる余地はない(民法882条)。
2 したがって、指定受取人と当該指定受取人が先に死亡したとすればその相続人となるべき者とが同時に死亡した場合において、その者又はその相続人は、同項にいう「保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人」には当たらないと解すべきである。そして、指定受取人と当該指定受取人が先に死亡したとすればその相続人となるべき者との死亡の先後が明らかでない場合に、その者が保険契約者兼被保険者であったとしても、民法32条の2の規定の適用を排除して、指定受取人がその者より先に死亡したものとみなすべき理由はない。
3 そうすると、前記事実関係によれば、民法32条の2の規定により、保険契約者兼被保険者であるAと指定受取人である妻Bは同時に死亡したものと推定され、AはBの法定相続人にはならないから、Aの相続人である弟Cが保険金受取人となることはなく、本件契約における保険金受取人は、商法676条2項の規定により、Bの兄である被上告人のみとなる。
「指定受取人の死亡の時点で生存していなかった者はその法定相続人になる余地はない」ことから、夫は妻の相続人にはならず、妻が受け取るべきだった死亡保険金は、妻の相続人(妻の兄)がその受取人となり、夫の相続人(夫の弟C)はその受取人とはなりません。
想う相続税理士