【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

類似業種比準方式による非上場会社の債務免除時の贈与(株式価値上昇部分)の計算方法

相続税専門税理士の富山です。

今回は、債務免除により発生する贈与を類似業種比準価額で計算する場合の計算方法について、お話します。

出典:TAINS(評価事例708321)(一部抜粋加工)
質疑応答事例8321


相続税専門税理士に任せてスッキリ!
相続税専門税理士が直接対応
事前予約で土日祝日夜間対応可能
明確な料金体系+スピード対応
大手生命保険会社様で相続税・贈与税に関するセミナー講師の実績有(最近の実績:令和5年11月・令和5年12月・令和6年2月)

または はこちらから


会社が助かると会社の株式の価値が上がる

長男Aと二男Bが50%ずつ株式を所有する非上場会社C社があるとします。

C社の資金繰りが悪いため、長男Aが自己資金をC社に入れていました。

長男AからC社に対する貸付金、C社から見れば長男Aからの借入金がある、ということです。

それでもC社の資金繰りが一向によくならないため、長男Aは返済を受けるのをあきらめて、C社に対する貸付金を「債権放棄」したとします(C社から見れば「債務免除」を受けた、ということになります)。

この場合、C社は借入金という負債が無くなります。

借入金のある会社から、借入金のない会社(または借入金が少なくなった会社)になるため、その会社の株式の価値が上がります。

つまり、長男Aの債権放棄により、二男Bの所有している株式の価値が上がります。

長男Aから二男Bに対する贈与が発生します。

類似業種比準方式で評価する場合の株式の価値上昇部分の計算方法

相続税や贈与税を計算する場合における非上場株式の評価方法には、「原則的評価方式」「特例的評価方式」があり、「原則的評価方式」による場合には、「類似業種比準方式」「純資産価額方式」のいずれか(またはそのミックス)で計算します。

類似業種比準方式で計算する場合、株式の価値上昇部分は次のように計算します。

類似業種比準方式により評価した株式の価額の増加部分の価額は、

①直前期末において債務免除があったものと仮定して計算した類似業種比準価額

から、

②直前期末において債務免除がなかったものとして計算した類似業種比準価額

を控除した金額によることになる。

なお、直前期末において債務免除があったものとして仮定した場合の類似業種比準価額計算上の

1株当たりの配当金額〈B〉、
1株当たりの利益金額〈C〉及び
1株当たりの純資産価額〈D〉

は、次により計算するのが妥当である。

<1株当たりの配当金額〈B〉及び1株当たりの利益金額〈C〉の金額>

直前期末において債務免除がなかったものとして計算した類似業種比準価額計算上の金額に相当する金額による。

<1株当たりの純資産価額〈D〉の金額>

直前期末において債務免除がなかったものとして計算した類似業種比準価額計算上の〈D〉の金額の計算の基とした純資産価額に債務免除額(その債務免除について課されるべき法人税等の額を控除した金額)を加算した金額を直前期末現在の発行済株式数で除して計算した1株当たりの金額による。

とりあえず純資産価額方式で計算してみるのも手

非上場会社の株主が債権放棄した場合で、他の株主に贈与税が課税されるか心配なときは、とりあえず純資産価額方式で計算してみるのも手です。

債務免除により贈与が発生しても、贈与税の非課税枠内(他の贈与も含めて年間110万円以下)であれば、贈与税の課税はありません。

非上場株式は、(清算中の会社でなければ)純資産価額方式で評価することも認められています。

長男Aが200万円の債権放棄をした場合、二男Bの持分割合は50%ですから、200万円×50%=100万円の価値上昇がある、100万円≦110万円だから、(他に贈与がなければ)贈与税は課税されない、と「とりあえず」考えることができます。

元々の株価がマイナスであれば、もっと贈与しても大丈夫、ということになるのですが、その場合には他の勘定科目もチェック(土地に含み益がないか等)する必要があります。

想う相続税理士

配当還元方式の場合にも純資産価額方式で評価することが認められています。