相続税専門税理士の富山です。
今回は、兄弟姉妹と養子縁組をすることによる相続税の節税効果について、お話します。
相続税の課税タイミングを減らす
「養子縁組」というと、子供の配偶者を養子にしたり、孫を養子にしたりすることによって、「相続税の非課税枠」(遺産にかかる基礎控除額)や「死亡保険金・死亡退職金の非課税枠」(非課税限度額)を増やしたり、「相続税の総額」の計算上、相続人の数が増えることにより相続税が安く計算できる効果が生まれたりしますが(他にも節税効果があります)、ケースによっては、兄弟を養子にすることによって相続税が安くなることもあります。
例えば、推定被相続人(相続の発生が予想される方)がご結婚されておらず(「長男」だとします)、お子さんがいらっしゃらない場合、相続が発生すると、その相続人は親御さんになります(母が既に亡くなっていて「父」のみだとします)。
長男の死亡後、父が死亡すると、その相続人は長男のご兄弟(兄弟姉妹)になります(長男は二人兄弟で「長女」のみだとします)。
そうすると、最終的に長女が長男の財産を相続するにしても、一度父を経由してから財産を相続することになるため、相続税の課税タイミングが2回になります(父の死亡が長男の死亡後10年以内に発生した場合には、短期間に相続が続けて発生することにより、同じ財産に何度も相続税が課税されることにより課税が重くなることを軽減する「相次相続控除」の適用により、父の相続に係る相続税を安くできることがあります。以下同じ)。
また、相続財産の中に不動産があれば、相続登記費用や登録免許税も2回かかります。
このような場合、長女が長男と養子縁組をし、長男から直接財産を相続することにより、相続税の課税タイミングを1回に減らすことができます。
相続税の実効税率の上昇を避ける
長男だけでなく、父にも多額の財産がある場合、長男が父の財産を相続し、長女がその後に父の財産を相続すると、長女は「父が元々所有していた財産+(長男の死亡により相続した)長男が元々所有していた財産」の2人分の財産に対する相続税を納めることになります。
相続税は超過累進税率であるため、財産が増えれば増えるほど適用される税率が高くなり、税負担が重くなります。
したがって、長女が2人分の財産を一度に相続すると、別々に相続するより税負担は重くなります。
しかし、長女が長男の養子になった場合には、その長男の財産を子供(養子)として相続し、次に、父の財産を子供(実子)として相続することになります。
つまり、財産を分散して相続することになります。
それにより、適用される相続税の税率は一度に相続するのに比べると下がるため、相続税の負担も軽くなります。
相続放棄や遺言の場合のデメリット
養子縁組をしなくても、長男の相続の際に父が相続放棄をすれば、長女が長男の財産を相続することができます。
しかし、この場合には「兄弟姉妹」としての立場での相続となるため、相続税が2割増しで計算されます。
また、養子になるのが嫌だという場合、遺言で財産を受け取る方法も考えられますが、この場合にも(「兄弟姉妹」としての立場での遺贈となるため)相続税が2割増しで計算されます。
想う相続税理士