【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

共有で相続した場合の小規模宅地等の特例の適用範囲

相続税専門税理士の富山です。

今回は、共有で相続した宅地が、どこまで特例対象宅地等に該当するか、ということについて、お話します。


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自宅と同じ番地で商売をやっている場合

次のような仮定で話を進めます。

夫・妻・長男の3人家族がいらっしゃいます。

夫は、ご自分の所有する土地の上にご自宅を建て、そこに3人で住んでいます。

3人とも同一生計(お財布が一緒の関係)です。

ご自宅が建っている土地(500㎡)には、ご自宅だけでなく、板金塗装工場も建っています。

これは、板金塗装の個人事業を営んでいる長男が建てたモノで、長男はその工場で商売をやっています。

ご自宅の敷地は、その土地の30%(500㎡×30%=150㎡)部分、板金塗装工場の敷地は70%(500㎡×70%=350㎡)部分です。

夫が亡くなった場合、ご自宅の敷地部分は小規模宅地等の特例の適用の「特定居住用宅地等」、板金塗装工場の敷地部分は「特定事業用宅地等」に該当しそうですよね。

1つの土地なので共有で相続すると・・・

夫が亡くなりました。

遺産分割協議の結果、自宅の敷地部分は妻、板金塗装工場の敷地は長男が相続することにしました。

もちろん、上記の小規模宅地等の特例の適用を受けるためです。

ところが、ご自宅と板金塗装工場が建っている土地は、500㎡の1筆の土地です。

ご自宅の敷地と板金塗装工場の敷地の境界線はありません。

そこで、その1筆の土地を、妻30%・長男70%の共有で相続することにしました。

共有の割合を実際の利用割合(自宅敷地割合:工場敷地割合)に合わせたのです。

この場合、小規模宅地等の特例はどのように適用できるのでしょうか?

妻が30%相続するということは、妻は上記の図のAとCの部分(合計150㎡で30%相当)を取得することになるのでしょうか?

長男が70%相続するということは、長男は上記の図のBとDの部分(合計350㎡で70%相当)を取得することになるのでしょうか?

もしそうであれば、A・Cは配偶者が取得した亡くなった方の居住用の宅地ですから、特定居住用宅地等に該当し、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。

同じく、B・Dは生計一親族の事業用の宅地ですから、一定の要件を満たせば、特定事業用宅地等に該当し、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。

共有だと妻も長男も自宅敷地と工場敷地を相続する

しかし、実際にはそうはいきません。

妻が取得する部分は、全体の30%ですから、AとBの部分です。

長男が取得する部分は、全体の70%ですから、CとDの部分です。

特定事業用宅地等の検討

長男が取得する部分のうち、板金塗装工場の敷地はDのみですから、D部分(245㎡相当)のみが特定事業用宅地等に該当します(その他の要件を満たすことが前提)。

B部分については、配偶者が取得しているため、特定事業用宅地等に該当しません。

特定居住用宅地等の検討

妻が取得する部分のうち、ご自宅の敷地はAのみです。

このA部分は特定居住用宅地等(配偶者が取得)に該当します。

ご自宅の敷地のうちA以外の部分、つまりCについては、長男が取得していますが、長男は同居親族であるため、居住・所有継続要件等を満たせば、特定居住用宅地等に該当します。

想う相続税理士

B部分を特定事業用宅地等にするためには、ご自宅の敷地と板金塗装工場の敷地を分筆する(切って別々の土地にする)必要があります。