【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続人との共有になっている建物の敷地の評価

相続税専門税理士の富山です。

今回は、亡くなった方の土地の上に、亡くなった方と相続人の方が共有で所有していた建物がある場合の、その土地の評価について、お話します。


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土地と建物の所有者が異なる場合には?

亡くなった方(父)がお持ちの土地の上に、父60%・長男40%ずつの共有で所有していた建物があるとします。

この土地は、2つに分けて考えます。

「①父が自分の土地の上に自分で建物を建てていた部分(60%部分)」「②父が自分の土地を長男に貸していた(長男がその借りた土地の上に建物を建てていた)部分(40%部分)」の2つです。

②は「貸している土地」(通常は「貸地」となり、借地権が発生します)なのですが、通常、親子間では地代を払わない(タダ貸し)でしょう。

その場合には「使用貸借」に該当し、「借地権を考慮しない『自用地』」(①と同じ土地)として評価します。

使用貸借通達(一部抜粋)
(使用貸借による土地の借受けがあった場合)
1 建物又は構築物(以下「建物等」という。)の所有を目的として使用貸借による土地の借受けがあった場合においては、借地権(建物等の所有を目的とする地上権又は賃借権をいう。以下同じ。)の設定に際し、その設定の対価として通常権利金その他の一時金(以下「権利金」という。)を支払う取引上の慣行がある地域(以下「借地権の慣行のある地域」という。)においても、当該土地の使用貸借に係る使用権の価額は、零として取り扱う。
この場合において、使用貸借とは、民法(明治29年法律第89号)第593条に規定する契約をいう。

民法(一部抜粋)
(使用貸借)
第五百九十三条 使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。

共有の建物を他人に貸していたら?

上記の長男と共有で所有していた建物を他人に貸していた場合、①の部分は「貸家建付地」として評価します(ザックリ言うと、その建物を借りている人に発生した権利が土地に及ぶ分、評価が安くなります)が、②の部分は(上の建物を他人に貸していたとしても)「自用地」として評価します。

②の部分は、父が長男に(タダで)貸して、長男が(タダで)借りた土地の上に建物を建てて賃貸していますので、建物を借りている人と父の間に長男が介在しており、貸家建付地評価にならないのです。

小規模宅地等の特例の適用はどうなる?

租税特別措置法(一部抜粋)
第69条の4 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
四 貸付事業用宅地等 被相続人等の事業の用に供されていた宅地等で、次に掲げる要件のいずれかを満たす当該被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいう。
イ 当該親族が、相続開始時から申告期限までの間に当該宅地等に係る被相続人の貸付事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、当該貸付事業の用に供していること。
ロ 当該被相続人の親族が当該被相続人と生計を一にしていた者であつて、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続き当該宅地等を自己の貸付事業の用に供していること。

上記の土地を長男が相続し、貸付事業を引き継ぐなど、所定の要件を満たした場合には、①の部分について、相続税の申告において、小規模宅地等の特例を適用することができます(上記条文のイに該当)。

その長男が父と生計を一にする親族だった場合、所定の要件を満たした場合には、②の部分についても、貸付事業用宅地等として、小規模宅地等の特例を適用することができます(上記条文のロに該当)。

想う相続税理士

この場合、先に②について小規模宅地等の特例を適用した方が有利になります(自用地ベースなので単価が高い)ので、ご注意を。