相続時精算課税制度とは?
相続時精算課税制度は、贈与した時に、非課税枠の範囲内の贈与であれば、贈与税を支払わず、その財産の金額を、相続の時に、通常の相続財産に加算して、相続税を支払う、という制度です。
つまり、贈与した時に贈与税が課税されないから、得をするのかな、と思いきや、相続の時に相続税が課税されるため、結局は税金が課税されるのです。
相続税がかからないように生前に贈与して、安い贈与税、または贈与税無税で財産の移転を図ろう、とするのが、贈与のよくある基本的な使い方ですよね。
しかし、相続時精算課税制度については、結局は相続の時に相続税が課税されるため、贈与しなければ、その財産はそのまま相続財産を構成することになりますから、贈与しても、しなくても、相続税が課税されるということになり、あまり節税には使えないのではないか、とお考えになるかもしれません。
財産がある方が知っている節税に使えるパターン
しかし、相続時精算課税制度は、節税に使える場合があります。
これから値上がりする財産です。
相続時精算課税制度による贈与財産は、相続の時に相続税が課税されるのですが、贈与時の評価額で相続税が課税されるのです。
つまり、贈与せずにずっと持っていると値上がりしてしまう財産については、その値上がり前に贈与することによって、その値上がり前の評価額で相続税を計算することができるのです。
ですから、確実に値上がりする財産については、相続時精算課税制度による贈与をすることによって、相続税を安くする効果があります。
ただし、値上がりするかどうかというのは、実際には誰にも分かりません。
この相続時精算課税制度による贈与財産が、相続の時に値下がりしていたとしても、贈与時の評価額で相続税が課税されため、値下がりするのであれば贈与せずにそのまま持っていて、値下がりした後の評価額で相続税が課税された方が良かった!という結果になることもあるのです。
ですから、相続時精算課税制度を適用する場合には、そのリスクをきちんと考慮して実行する必要があります。
財産が「ない」方が節税に使えるパターン
このパターン以外にも、相続時精算課税制度が節税に使える場合があります。
それは、相続税が出ない場合です。
つまり、あまり財産が無い方の方が節税に使える場合があるのです。
相続時精算課税制度による贈与の非課税枠は2,500万円です。
この2,500万円の非課税枠は、何年かにわたって使うこともできますが、1年で使うこともできます。
そして、この非課税枠を超えた部分については、20%の贈与税を納める必要があります。
ちなみに、この贈与税は、相続税の申告の際、計算された相続税から控除されることによって精算されます。
相続時精算課税制度以外の贈与もあります。
それが「暦年課税贈与」です。
暦年課税贈与の非課税枠は、年間110万円です。
110万円を超えると贈与税が課税されます。
父から子に暦年課税贈与により1,000万円の贈与した場合、その子供が20歳以上であれば、贈与税は177万円です。
そして、父が、贈与から3年以内に亡くなったりしなければ、この財産については贈与税の課税で終わりです。
父が相続の際、多額の財産を持っていたとしても、その財産と合わせて、相続税が課税されることはありません。
この父が、相続の際、ほとんど財産を持っていない場合にはどうなるでしょうか?
この場合には、1,000万円の贈与は、相続時精算課税制度により行った方がいいのです。
非課税枠は2,500万円ですから、この1,000万円の贈与には、贈与税が課税されません。
そして、その代わりに、相続の時に相続税が課税されるのですが、この1,000万円の他にほとんど財産がなければ、相続人が1人しかいなかったとしても、相続税の非課税枠(遺産に係る基礎控除額)は3,600万円です。
「通常の相続財産」+「1,000万円の相続時精算課税制度による贈与財産」の金額が3,600万円以下であれば、相続税が課税されません。
つまり、贈与税も課税されなければ、相続税も課税されないのです。
まったく無税で早期に多額の財産の移転ができるということになります。
税金の特例は、財産がある人にしか有利に働かないと考えるのは間違いですので、ご注意を。
とはいえ、贈与した時に、相続税が課税されるかどうかは、分からない場合も多いでしょう。
早めに財産を移転できるメリットと、課税のリスクを総合勘案して、慎重に選択しましょう。