相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続時精算課税による贈与を受け、かつ、相続で財産を取得しなかった方が、相続税の申告において、未成年者控除・障害者控除の適用を受けられるか、について、お話します。
相続税法の条文を見てみる
相続時精算課税による贈与により取得した宅地は、相続税の課税対象になりますが、相続税の申告における小規模宅地等の特例の適用対象にはなりません。
想う相続税理士秘書
同じ相続税がかかるなら、亡くなった時に相続でもらった方が良かった(小規模宅地等の特例が適用できて相続税が安くなったのに)なんてこともあります。
では、相続時精算課税による贈与を受け、かつ、相続で財産を取得しなかった方は、相続税の申告の際、相続税の特例である未成年者控除・障害者控除は適用できるのでしょうか?
相続税法の条文を見てみましょう。
相続税法(一部抜粋加工)
第19条の3 未成年者控除
相続又は遺贈により財産を取得した者(第1条の3第1項第3号又は第4号の規定に該当する者を除く。)が当該相続又は遺贈に係る被相続人の民法第5編第2章(相続人)の規定による相続人(相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人)に該当し、かつ、18歳未満の者である場合においては、(中略)
相続税法(一部抜粋加工)
第19条の4 障害者控除
相続又は遺贈により財産を取得した者(第1条の3第1項第2号から第4号までの規定に該当する者を除く。)が当該相続又は遺贈に係る被相続人の前条第1項に規定する相続人に該当し、かつ、障害者である場合には、(中略)
「相続又は遺贈により」、つまり、相続で財産を取得した方限定、と読めます。
相続税の申告書を見てみる
未成年者控除・障害者控除は、相続税の申告書第6表「未成年者控除額・障害者控除額の計算書」で計算します。
こちらを見てみますと(一部抜粋加工)、
1 未成年者控除(この表は、相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した法定相続人のうちに、満18歳にならない人がいる場合に記入します。)
2 障害者控除(この表は、相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した法定相続人のうちに、一般障害者又は特別障害者がいる場合に記入します。)
とあります。
相続時精算課税による贈与を受け、かつ、相続で財産を取得しなかった方でも、法定相続人であれば、適用が受けられそうです。
なぜ、相続税法と相続税の申告書第6表で書いてあることが違うのでしょうか?
どちらが正しいのでしょうか?
相続税法にタイトルの書かれていない怪しい条文が・・・
いろいろ調べていたら、相続税法に「未成年者控除」とか「障害者控除」というようなタイトルが書かれてない怪しい条文がありました。
相続税法(一部抜粋加工)
第21条の16(ノータイトル)特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかつた相続時精算課税適用者については、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産で第21条の9(相続時精算課税の選択)第3項の規定の適用を受けるものを当該特定贈与者から相続(当該相続時精算課税適用者が当該特定贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により取得したものとみなして第1節(「第11条 相続税の課税」から「第20条の2 在外財産に対する相続税額の控除」まで)の規定を適用する。
2 前項の場合において、特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかつた相続時精算課税適用者及び当該特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した者に係る相続税の計算についての第19条の3(未成年者控除)及び第19条の4(障害者控除)の規定の適用については、第19条の3第3項中「財産」とあるのは「財産(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で第21条の9第3項の規定の適用を受けるものを含む。)」と、第19条の4第1項中「該当する者」とあるのは「該当する者及び同項第5号の規定に該当する者(当該相続に係る被相続人の相続開始の時においてこの法律の施行地に住所を有しない者に限る。)」とする。
つまり、この第21条の16の規定により、相続時精算課税による贈与を受け、かつ、相続で財産を取得しなかった方も、相続で財産を取得した方とみなされることによって、法定相続人に該当すれば、未成年者控除・障害者控除の適用が受けられる、ということになります。
想う相続税理士
何も考えずに入力すると、適用できないのに適用できるモノとして相続税を計算する場合があったりするのです(特官調査で指摘された経験有。当時の私の知識不足が原因です)。
相続税の計算をする場合には、各計算過程の要件充足等に十分注意を払い、面倒くさがらずに確認し、申告書を作成しましょう。