相続税専門税理士の富山です。
今回は、扶養義務者相互間の生活費等の非課税贈与について、お話します。
贈与に該当しても非課税
相続税法には、非課税となる贈与が規定されています。
相続税法(一部抜粋加工)
第21条の3 贈与税の非課税財産
次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
この「扶養義務者」については、相続税法基本通達で次のように規定されています。
相続税法基本通達(一部抜粋)
1の2-1 「扶養義務者」の意義
相続税法(昭和25年法律第73号。以下「法」という。)第1条の2第1号に規定する「扶養義務者」とは、配偶者並びに民法(明治29年法律第89号)第877条《扶養義務者》の規定による直系血族及び兄弟姉妹並びに家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族をいうのであるが、これらの者のほか三親等内の親族で生計を一にする者については、家庭裁判所の審判がない場合であってもこれに該当するものとして取り扱うものとする。
なお、上記扶養義務者に該当するかどうかの判定は、相続税にあっては相続開始の時、贈与税にあっては贈与の時の状況によることに留意する。
つまり、
- 配偶者
- 直系血族及び兄弟姉妹
- 家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族
- 三親等内の親族で生計を一にする者
親子間の生活費等の贈与は必ず非課税になる?
上記に「直系血族」とありますので、親子間で生活費等の贈与をすると非課税、ということになります。
子が資産も収入もあるお金持ちの場合でも、親が生活費等の贈与をすれば非課税になるのでしょうか?
相続税法基本通達〔扶養義務者からの生活費等関係〕を見ていきます。
相続税法基本通達(一部抜粋)
21の3-3 「生活費」の意義
法第21条の3第1項第2号に規定する「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除く。)をいい、治療費、養育費その他これらに準ずるもの(保険金又は損害賠償金により補てんされる部分の金額を除く。)を含むものとして取り扱うものとする。
名目上は生活費でも、「通常の日常生活を営むのに必要」ではないモノは非課税になりません(続く)。
相続税法基本通達(一部抜粋)
21の3-6 生活費等で通常必要と認められるもの
法第21条の3第1項第2号に規定する「通常必要と認められるもの」は、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいうものとする。
つまり、必要以上に贈与をしても、非課税にはなりません。
相続税法基本通達(一部抜粋加工)
21の3-5 生活費及び教育費の取扱い
法第21条の3第1項の規定により生活費又は教育費に充てるためのものとして贈与税の課税価格に算入しない財産は、生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産をいうものとする。したがって、生活費又は教育費の名義で取得した財産を預貯金した場合又は株式の買入代金若しくは家屋の買入代金に充当したような場合における当該預貯金又は買入代金等の金額は、通常必要と認められるもの以外のものとして取り扱うものとする。
その都度、贈与をし、その都度、生活費として費消する必要があります(貯金したらダメ)。
お金の流れが重要
受贈者(親から子に贈与する場合には子)に資産があったらダメ、収入があったらダメ、という規定はありません。
人により(ご家庭により、親族により)、生活水準は様々ですから、一概に受贈者の資産や収入の要件を定めることはできないでしょう。
ただし、上記にあるとおり、「被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産」である必要があります。
また、子が(例えば会社で)頑張って働いて、収入を増やし、それに応じて預貯金の残高が増えた場合、「その預貯金の残高の増加は親からの贈与によるモノだ」と税務署に指摘されない(指摘されても説明できる)ようにしておく必要があるでしょう。
そのためには、贈与されたらすぐに費消するとともに、贈与による入金と費消による出金が分かる(説明できる)ようにしておく(分かりやすいお金の流れにしておく)ことが重要です。
想う相続税理士
生活費等の贈与を受けている人は、預貯金を増やしてはいけない、という決まりはないのですが、(贈与額が大きくなければ、それほど神経質になる必要はないかもしれませんが)その実態(お金の流れ)をきちんと説明できるようにしておきましょう。