相続税専門税理士の富山です。
今回は、小規模宅地等の特例の注意点について、お話します。
亡くなった方のご自宅の敷地は安く評価できる場合がある
相続税の申告においては、一定の「居住用」または「事業用」の土地について、最大で330㎡または400㎡まで8割引きで申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があります。
残された遺族の生活基盤となるような土地については、課税を軽減してあげよう、という趣旨によるものです。
亡くなった方の「居住用」の土地、つまり、ご自宅の敷地についても、この特例の対象となります。
亡くなった時にご自宅にいないと「居住用」にならない?
「亡くなる最後の時まで自宅に住み続けたい!」と思っても、その願いがかなわない場合もあります。
老人ホームなどの施設に入所され、そこでお亡くなりになるケースもあります。
その方がお一人でご自宅にお住まいになっていた場合、老人ホームに入居されると、ご自宅は居住の用に供されていない状態になります。
このような場合、ご自宅の敷地が「居住用」に該当しなくなるかというと、必ずしもそうとは限りません。
「一定の要件」に該当すれば、「居住用」の土地として、小規模宅地等の特例の適用対象となります。
生計別親族が実家に戻ってくると増税になる
上記の「一定の要件」は、
租税特別措置法施行令第40条の2 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
に記載されているのですが、要約すると2つ要件があり、1つ目の要件は、
ご自宅が居住の用に供されなくなった理由が、亡くなった方が介護保険法に規定する要介護認定又は要支援認定を受けていた方その他これに類する方で、老人福祉法に規定する認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム又は有料老人ホーム等に入居又は入所をしていたこと
というような内容になっており、2つ目の要件は、
そのご自宅が、「事業の用」又は「亡くなった方・亡くなった方の生計一親族(亡くなった方と入居又は入所の直前において生計を一にし、かつ、そのご自宅建物に引き続き居住している親族を含む)以外の方の居住の用」に供されていないこと
という内容になっています。
つまり、老人ホームへの入居後に空き家となってしまった実家に、「使わないのはモッタイナイ!」と生計「別」親族が引っ越してくると、そのご自宅敷地については、小規模宅地等の特例を適用することができなくなってしまうのです。
想う相続税理士
相続税の申告には、このような「落とし穴」がいろいろとありますので、ご注意を。