相続税専門税理士の富山です。
今回は、「更正の請求」の期限について、お話します。
財産を過大に申告してしまった場合には・・・
相続税の申告は、亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内にしなければなりません。
10ヶ月以内に申告書を作成し、税務署に提出するワケですが、間違ってしまう場合もあります。
財産の計上もれなどがあったことにより、相続税を少なく申告してしまった場合には、修正申告をして、追加の相続税を納めることになります。
財産を過大に計上してしまったことなどにより、相続税を多く申告してしまった場合には、「更正の請求」をすることにより、納め過ぎた相続税を返してもらえます。
更正の請求には期限がある
通常、この相続税を返してもらうための「更正の請求」は、法定申告期限から5年以内にする必要があります。
ですから、5年を過ぎた後に財産の過大計上に気がついても、納め過ぎた相続税は返してもらえない、ということになります。
ところが、この「更正の請求」には、5年を過ぎた後でも認められるパターンがあります。
例えば、申告期限までに遺産分割協議が整わなかったため、10ヶ月の申告期限においては、各相続人が法定相続分で取得したものとして申告し(遺産が未分割の場合には、このように申告することになります)、その後、遺産分割が確定したような場合です。
例えば、ある相続人の方が、当初は法定相続分に応じて1/4(25%)の財産に対応する相続税を納めていたけれども、遺産分割の確定により、1/5(20%)の財産を相続することになった場合には、25%△20%=5%部分の相続税を結果的に納め過ぎている、ということになります。
この場合には、法定申告期限から5年を経過していても、その遺産分割が確定したことを知った日の翌日から4ヶ月以内であれば、「更正の請求」をすることができ、5%部分の相続税を返してもらえます。
5年を過ぎたら財産の過大計上の計算し直しは認められない
遺産分割が確定し、上記の5%部分の相続税を返してもらおうとして、改めて相続税の申告内容を見直した際、財産の過大計上に気付いたとします。
この時、まだ法定申告期限から5年を経過していなければ、5%部分と一緒に、財産の過大計上部分についても、相続税の申告をやり直すことができます。
しかし、5年を経過している場合には、その過大計上部分のカットは認められません。
遺産分割も大事だが財産の評価も大事
遺産分割協議が調わない場合、10ヶ月以内にする当初申告は、なんとなく仮の申告みたいな感じになるかもしれません。
後で遺産分けが決まったら、その時に財産の取得割合に応じてきちんとした申告をするんだから、今はちょっと適当でもいいだろう、というような感じになってしまうかもしれません。
しかし、10ヶ月を経過した後は、大きな財産をメインに、どのように遺産分けをするかの方に注意が向いてしまい、そもそもの財産の評価が正しいかの検証が、なかなかできなくなる可能性があります。
そして、そのまま5年を経過してしまうと、上記でお話したとおり、過大計上部分のカットができなくなってしまいます。
遺産分割協議が整わない場合でも、財産の評価は手を抜かないようにしましょう。
想う相続税理士