相続税専門税理士の富山です。
今回は、粉飾決算により株式の評価額が過大になっていたために相続税を納め過ぎたから、納めた相続税を還付して欲しい、と「更正の請求」をしたモノの、認められなかった事例について、お話します。
出典:TAINS(Z888-2543)(一部抜粋加工)
令和4年5月12日判決
相続税は誰が決める?
土地や建物を所有していると、春先に市区町村役場から固定資産税の納税通知書や納付書が届きます。
固定資産税が「賦課課税方式」の税金だからです。
賦課課税方式の場合、税額を国や地方公共団体が計算し、納税者に通知します。
では、相続税はどうかというと、「申告納税方式」です。
国や地方公共団体に頼らず、自分で税額を計算して納税するのです。
申告納税方式の更正の請求のポイント
申告納税制度は、納税者自らが正しい申告納税をすることを前提としているから、一旦申告した以上、その申告が誤ったとして更正の請求をするには、その正しい課税標準等又は税額等を納税者自らが証明すべきであり(国税通則法施行令6条2項は、更正の請求をしようとする者は、その更正の請求をする理由の基礎となる事実を証明する書類を国税通則法23条3項の更正請求書に添付しなければならない旨を定める。)
国税通則法施行令(一部抜粋)
第6条 更正の請求
2 更正の請求をしようとする者は、その更正の請求をする理由が課税標準たる所得が過大であることその他その理由の基礎となる事実が一定期間の取引に関するものであるときは、その取引の記録等に基づいてその理由の基礎となる事実を証明する書類を法第23条第3項の更正請求書に添付しなければならない。その更正の請求をする理由の基礎となる事実が一定期間の取引に関するもの以外のものである場合において、その事実を証明する書類があるときも、また同様とする。
更正の請求をする場合には、その相続税が過大になった原因(基礎事実)を税務署に「書類によって」証明する必要があるのです。
税務署は積極的に相続税を還付してくれない
課税庁が更正の請求の処理に当たり、申告額を見直すことは、税額の見直しにとどまらず、更正の請求における更正の事由の当否を判断するためであるということもでき、納税者から更正の事由に係る主張・立証がない場合には、納税者の主張・立証する範囲が明らかにならず、更正の請求における更正の事由の存否が判断できないこととなるから、このような場合には、申告によって一旦確定した税額が正当なものとして扱われることになる(この場合には、必ずしも課税標準等又は税額等の総額について確認することを要せず、更正をすべき理由がない旨の通知処分をすることも可能となるものと解される。)。
更正の請求をすれば税務署が正しい相続税を勝手に計算してくれる、というワケではないのです。
(本当に単純な計算ミス、というような場合を除き)ちゃんと更正の請求(相続税の還付)をしてもらえるような努力(中身のある主張・立証)が必要です。
それがない(できない)場合(実を結ばない、認められない場合)には、税務署は内容を確認する必要もなく、当初申告が正しい、ということになってしまうのです。
想う相続税理士
「納税者自らが正しい申告納税をすることを前提としている」のです。
とりあえず多めに相続税を申告しておいて、後で更正の請求をして相続税を還付してもらおう、と思っても、難しい場合がありますので、ご注意を。