相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続時精算課税制度の注意点について、お話します。
贈与税の課税パターンには2種類ある
お客様に「贈与税」についてのお話をすると、「110万円までは非課税なんだよね」と返されることが多いです。
これは「暦年課税贈与」と言われるモノのお話で、1年間に贈与により受け取った財産の金額から、110万円の基礎控除額を差し引いた残りの金額に対して、贈与税の税率を掛けたりして贈与税を計算します。
この暦年課税贈与の他に、もう1つ全く異なる税率で計算する贈与があります。
それが「相続時精算課税制度」による「相続時精算課税贈与」です。
相続時精算課税制度とは?
相続時精算課税制度とは、原則として18歳以上の子や孫などが、60歳以上の父母や祖父母などから財産の贈与を受けた場合に選択できる制度です。
想う相続税理士秘書
贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出することにより、相続時精算課税制度を選択することができます。
この選択をした場合には、その同じ方からの贈与については、ずっと相続時精算課税制度が適用されます(その方からの贈与については、110万円の非課税枠は使えなくなります)。
相続時精算課税制度の贈与者である父母や祖父母などが亡くなった場合、通常の相続財産に加えて、その贈与財産にも相続税がかかります。
実は、この相続時精算課税贈与には、2,500万円の非課税枠(正確には「特別控除額」)が設けられているため、その贈与者からの贈与については、合計額が2,500万円に達するまでは贈与税がかかりません。
その代わり、その贈与者が亡くなったら、相続税がかかるのです。
想う相続税理士
注意しなければならないのは2年目以降!
父母や祖父母などから2,500万円の暦年課税贈与を受けた場合、贈与税は8,105,000円になります(他に贈与により取得した財産がないモノとして計算)。
「でも、まとまったお金が必要だから贈与を受けたい!だけど、そんな高額な贈与税は払えない!」という場合、相続時精算課税贈与は有効です。
想う相続税理士秘書
先ほどお話したように、相続時精算課税制度を選択するためには、翌年の3月15日までに一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があるのですが、多額の贈与を受けることもあり、この手続きについては気を抜かずに実行されることと思います。
問題は、翌年以降です。
最初の年に1,000万円の相続時精算課税贈与を受けた場合、非課税枠が1,500万円残っています。
そこで、翌年1,500万円の贈与を受けることにしたとします。
暦年課税贈与には戻れませんから、この贈与は相続時精算課税贈与扱いです。
この時、最初の年と同じように、翌年の3月15日までに贈与税の申告をしなければ、非課税枠は適用されませんので、注意が必要です。
「最初の年に所定の手続きをしたのだから、自分には2,500万円の非課税枠がある。だから、2,500万円に達するまでは申告しなくてもいいんだ」と考えたら大間違いです。
3月15日までに申告しないと、1,500万円に対して20%の贈与税(300万円)が課税されます(もちろん延滞税や無申告加算税も課税されます)。
相続税法(一部抜粋)
第21条の12 相続時精算課税に係る贈与税の特別控除
相続時精算課税適用者がその年中において特定贈与者からの贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、特定贈与者ごとの贈与税の課税価格からそれぞれ次に掲げる金額のうちいずれか低い金額を控除する。
一 2,500万円(既にこの条の規定の適用を受けて控除した金額がある場合には、その金額の合計額を控除した残額)
二 特定贈与者ごとの贈与税の課税価格
2 前項の規定は、期限内申告書に同項の規定により控除を受ける金額、既に同項の規定の適用を受けて控除した金額がある場合の控除した金額その他財務省令で定める事項の記載がある場合に限り、適用する。
3 税務署長は、第1項の財産について前項の記載がない期限内申告書の提出があつた場合において、その記載がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その記載をした書類の提出があつた場合に限り、第1項の規定を適用することができる。
想う相続税理士