相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続放棄と配偶者の税額軽減、死亡保険金の非課税枠の関係について、お話します。
コンテンツ
配偶者は亡くなった方の財産形成の最大の貢献者として相続税が優遇される
配偶者には、取得した財産について、最低でも1億6,000万円(債務や葬式費用を控除した後の正味の財産の金額)の非課税枠(「配偶者の税額軽減」)がある(遺言や遺産分割等により実際に財産を取得することが前提)
国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋加工)
No.4158 配偶者の税額の軽減
配偶者の税額の軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。
(1)1億6千万円
(2)配偶者の法定相続分相当額
相続放棄をした配偶者も優遇される
この非課税枠は、相続放棄をしても適用できる
相続税法基本通達(一部抜粋加工)
19の2-3 相続を放棄した配偶者に対する相続税額の軽減
配偶者に対する相続税額の軽減の規定は、配偶者が相続を放棄した場合であっても当該配偶者が遺贈により取得した財産があるときは、適用があるのであるから留意する。
死亡保険金は相続放棄をしても受け取れる
亡くなった方が配偶者を受取人とする生命保険に入っていた場合、配偶者に支払われる死亡保険金は、生命保険契約に基づき、受取人として指定された配偶者に支払われるものであり、他の相続人との間で遺産分けをする財産ではない(必ずもらえる)
もっというと、つまり、民法上の相続財産ではない
しかし、相続税が課税される
(死亡に起因して支払われる経済的利益である、という点に着目して)相続財産と「みなされて」相続税が課税される
相続税法(一部抜粋加工)
第3条 相続又は遺贈により取得したものとみなす場合
次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該各号に掲げる者が、当該各号に掲げる財産を相続又は遺贈により取得したものとみなす。この場合において、その者が相続人であるときは当該財産を相続により取得したものとみなし、その者が相続人以外の者であるときは当該財産を遺贈により取得したものとみなす。
一 被相続人の死亡により相続人その他の者が生命保険契約の保険金又は損害保険契約の保険金を取得した場合においては、当該保険金受取人について、当該保険金のうち被相続人が負担した保険料の金額の当該契約に係る保険料で被相続人の死亡の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分
相続財産ではないから、相続放棄をしても受け取れる
死亡保険金には非課税枠がある
死亡保険金には、
500万円×法定相続人の数
で計算される「非課税枠」がある
「法定相続人の数」には、相続放棄をした方の人数も含めて計算する
相続人が子A・B2人+配偶者の場合、法定相続人の数は3人であり、配偶者が相続放棄をしても3人である
この場合、死亡保険金の非課税枠は、
500万円×3人=1,500万円
である
ただし、相続放棄をした方は、この非課税枠は適用できない
つまり、相続放棄した配偶者は、非課税枠の計算における頭数には入るが、非課税枠自体は使えない
死亡保険金の非課税枠適用上のルール
この非課税枠の適用の仕方にはルールがある
非課税枠は、もらった保険金の比で按分して適用する
相続税法(一部抜粋加工)
第12条 相続税の非課税財産
次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
六 相続人の取得した第3条第1項第1号に掲げる保険金については、イ又はロに掲げる場合の区分に応じそれぞれイ又はロに定める金額に相当する部分
ロ イに規定する合計額が当該保険金の非課税限度額を超える場合 当該保険金の非課税限度額に当該合計額(全ての相続人が取得した保険金の合計額)のうちに当該相続人の取得した保険金の合計額の占める割合を乗じて算出した金額
子A・子B・配偶者が、それぞれ死亡保険金を700万円ずつ(計2,100万円)受け取ったとする
配偶者が相続放棄をしないと、
子B:700万円△(1,500万円×700万円/2,100万円=500万円)=200万円
配偶者:700万円△(1,500万円×700万円/2,100万円=500万円)=200万円
となり、それぞれ、受け取った保険金のうちの非課税枠を飛び出た部分は200万円である
この配偶者の200万円には、基本的には相続税はかからない(1億6,000万円以下だから)
つまり、子A:200万円と子B:200万円の計400万円に対して相続税が課税される
配偶者が相続放棄すると、
子B:700万円△(1,500万円×700万円/1,400万円=750万円)<0円 ∴0円
配偶者:700万円△(0円:相続放棄をしたため非課税枠適用不可)=700万円
※1,400万円=子A:700万円+子B:700万円
となるが、上記同様、この配偶者の700万円には、基本的には相続税はかからない(1億6,000万円以下だから)
そうすると、子A・子B・配偶者の取得した亡保険金には、相続税が課税されなくなる
想う相続税理士