相続税専門税理士の富山です。
今回は、死亡保険金の受取人である相続人が相続放棄をした場合の取扱いについて、お話します。
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相続放棄をしても死亡保険金の受取りは可能
相続人が相続放棄をすると、相続財産を取得することができなくなります。
相続人ではなくなるからです。
しかし、死亡保険金は受け取ることができます。
死亡保険金は、亡くなった方の財産ではないからです。
死亡保険金は、指定された受取人に支払われるものであり、その受取人の固有の財産だからです。
死亡保険金の非課税枠は適用できなくなる
相続税の申告においては、
500万円×法定相続人の数
で計算される「死亡保険金の非課税枠」があります。
この非課税枠が適用できるのは、相続人の方です。
相続放棄をすると、相続人ではなくなります。
民法(一部抜粋)
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
したがって、相続放棄をすると、死亡保険金の非課税枠は適用できなくなります。
相続放棄により死亡保険金の非課税枠は減少しない
死亡保険金の非課税枠は、先ほどお話したように、
500万円×法定相続人の数
で計算されます。
「法定相続人の数」は、「相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数」であるため、相続放棄をした方がいても、この非課税枠が減少することはありません。
他の相続人の死亡保険金の非課税枠適用額が増える
相続が発生し、相続人が長男・二男の2人だとします。
長男・二男それぞれ、1,000万円の死亡保険金(2人合計2,000万円)を受け取ったとします。
法定相続人が2人であるため、死亡保険金の非課税枠は、
500万円×2人=1,000万円
です。
この1,000万円を死亡保険金の比で按分するため、死亡保険金の金額が1,000万円ずつと同額であれば、半分ずつ(50%の同比率で)適用することになり、
二男の非課税適用額:500万円
となります。
長男が相続放棄をした場合、長男は非課税枠を適用できなくなるため、非課税枠はすべて二男の死亡保険金に適用することになり、
二男の非課税適用額:1,000万円
となり、結果的に、二男の受け取った死亡保険金1,000万円は全額非課税、ということになります。
長男の相続放棄により、二男の相続税が安くなる場合がある、ということです。
相続放棄をすると相続税額の2割加算の対象になる?
相続で財産を取得した方が、亡くなった方の一親等の血族及び配偶者以外の方である場合には、その方の相続税は2割増しで計算されます。
上記の長男は相続放棄をしたので、相続人ではなくなるのですが、そうすると、長男はこの2割増し計算の対象になるのでしょうか?
なりません。
相続放棄をしても、子(一親等の血族)であることには違いがないからです。
想う相続税理士
相続税法基本通達(一部抜粋)
3-1 「相続を放棄した者」の意義
法第3条第1項に規定する「相続を放棄した者」とは、民法第915条《相続の承認又は放棄をすべき期間》から第917条までに規定する期間内に同法第938条《相続の放棄の方式》の規定により家庭裁判所に申述して相続の放棄をした者(同法第919条第2項《相続の承認及び放棄の撤回及び取消し》の規定により放棄の取消しをした者を除く。)だけをいうのであって、正式に放棄の手続をとらないで事実上相続により財産を取得しなかったにとどまる者はこれに含まれないのであるから留意する。