相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税申告における相続放棄をした方の注意点について、お話します。
贈与財産に対しても相続税が課税される場合がある
国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋加工)
No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
概要
相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与(「相続等」といいます。)によって財産を取得した人(※)が、被相続人から「加算対象期間」に暦年課税に係る贈与によって取得した財産があるときは、その人の相続税の課税価格にその財産の贈与時の価額を加算します。
※ 被相続人から相続や遺贈により、租税特別措置法第70条の2の2第12項第1号(直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税)および租税特別措置法第70条の2の3第12項第2号(直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税)に規定する管理残額以外の財産を取得しなかった人(相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得している人を除きます。)は含まれません。
ザックリ言うと、相続で財産を取得した方は、相続開始前の一定期間(加算対象期間)内に、亡くなった方から暦年課税による贈与により取得した財産がある場合には、相続でもらったのではなく贈与でもらった財産だとしても、その贈与でもらった財産の金額を、相続でもらった財産の金額に加算して、相続税を計算しなければなりません。
これを「生前贈与加算」といいます。
生前贈与の加算対象期間が延長されました
令和5年度税制改正により、それまで「亡くなる前3年以内」だった加算対象期間が、最高7年に延びました(現在はまだ3年です)。
被相続人の相続開始日 | 加算対象期間 |
~令和8年12月31日 | 相続開始前3年以内(死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間) |
令和9年1月1日~令和12年12月31日 | 令和6年1月1日から死亡の日までの間 |
令和13年1月1日~ | 相続開始前7年以内(死亡の日からさかのぼって7年前の日から死亡の日までの間) |
相続放棄をすれば相続できないから生前贈与加算は適用されない?
出典:TAINS(相続事例大阪局R050000)(一部抜粋加工)
誤りやすい事例(相続税関係 令和5年版) 大阪国税局資産課税課
(相続を放棄した者が生命保険金を受け取った場合)
【誤った取扱い】
39 次男は、被相続人が保険料を負担していた生命保険契約に基づき多額の保険金を取得したことから、相続を放棄し、相続人ではないこととなった。
そのため、相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産について3年以内の贈与加算は不要とした。
【正しい取扱い】
39 次男は、相続を放棄したとしても、生命保険金を遺贈により取得したものとみなされる(相法3①一)ことから、相続税法上、相続又は遺贈により財産を取得した者となるため、相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産については、3年以内の贈与加算をしなければならない(相法19①)。
相続放棄をしても、生命保険金を受け取ることができます。
相続放棄をして、生命保険金以外の財産を取得しなかった場合でも、その生命保険金の受取り自体が「相続で(遺贈で)財産を取得した」ことになるため、その相続放棄をした方が、相続開始前3年以内に贈与により取得した財産がある場合には、その贈与財産にも(生命保険金と一緒に)相続税が課税されます。
想う相続税理士