相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の申告における小規模宅地等の特例の「家なき子特例」のパターンを満たすための要件について、外国に住んでいる親族が適用する場合を想定して、お話します。
経過措置ではなく現在の取扱いはどうなっている?
「オカシイ」と思ったら確認しないと痛い目に遭う(専門家を盲目的に信用しちゃダメ)上記の記事では、家なき子特例の経過措置の適用を失念した失敗事例に基づくお話をしました。
では現在、外国にいる親族が亡くなった方のご自宅を相続で取得した場合、要件充足をどのように考えればいいのでしょうか?
想う相続税理士秘書
家なき子特例の親族の要件
租税特別措置法上、家なき子の要件については、次のように定められています。
第69条の4 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
ロ 当該親族(当該被相続人の居住の用に供されていた宅地等を取得した者であつて財務省令で定めるものに限る。)が次に掲げる要件の全てを満たすこと(当該被相続人の配偶者又は相続開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた親族で政令で定める者がいない場合に限る。)。
(1) 相続開始前3年以内に相続税法の施行地内にある当該親族、当該親族の配偶者、当該親族の三親等内の親族又は当該親族と特別の関係がある法人として政令で定める法人が所有する家屋(相続開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く。)に居住したことがないこと。
(2) 当該被相続人の相続開始時に当該親族が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと。
(3) 相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有していること。
3年以内非居住要件は相続税法の施行地外には適用されない
上記(1)を見ると、「相続開始前3年以内に相続税法の施行地内にある当該親族~が所有する家屋~に居住したことがないこと」とあります。
単純に親族等が所有する家屋ではなく、「相続税法の施行地内にある」家屋です。
相続税法の施行地は、次のように定められています。
相続税法(一部抜粋)
附則抄
2この法律は、本州、北海道、四国、九州及びその附属の島(政令で定める地域を除く。)に、施行する。
相続税法施行令(一部抜粋)
附則
2法附則第二項の規定により法の施行地域から除かれる地域は、当分の間、歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島とする。
ザックリ言うと、「3年以内に自分または親族等が所有する本州等の家屋に居住したことがないこと」が要件となっているため、自分または親族等が所有する例えば南米等の家屋に居住していた場合には、この要件は満たし得る、ということになります。
相続開始時非所有要件は南米等でも適用される
上記(2)を見ると、「相続開始時に当該親族が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと」とあります。
こちらは、「相続税法の施行地内にある」(家屋)というような限定はありません。
つまり、自分が所有する南米等の家屋に居住していた場合には、要件を満たさない、ということになります。
想う相続税理士