相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税対策について、お話します。
相続税がかかる方は、割合的にはかなり少ないです。
12人が亡くなって、1人に相続税が課税される感じです。
その1人に該当する方の相続人の方々は、他の人がみんな相続税を納めていないとなると、相続税はできるだけ安く抑えたい、というように考えるのは当然でしょう。
そのため、生前から相続税対策(節税対策)を検討される方もいらっしゃいますが、あまりやり過ぎると、逆に損してしまうこともあります。
相続税評価額が安くなれば得なのか
相続税対策としてよく話に出るのが、「不動産の購入」です。
よく言われる「不動産投資」も不動産を購入しますが、購入して賃貸に回す(不動産投資)までしなくても、相続税の節税対策にはなります。
それは、買った値段よりも不動産の相続税評価額が安くなるからです。
例えば、1億円で買った土地だとしても、その土地の路線価をベースに計算した金額が8,000万円であれば、8,000万円の相続税評価額になり、その8,000万円に対して相続税が課税されます。
1億円で買った土地なのにです。
1億円で買ったのであれば、1億円の価値がありそうですけどね。
建物の場合、1億円で建築すると、6,000万円ぐらいの相続税評価額になります。
これを賃貸に回すと、借家人の権利が発生することによって、さらに評価が下がりますが、回さなくても十分相続税評価額は下がっていますよね。
現金として持っていると、その金額に丸々相続税がかかるのに対し、不動産の購入に充てると、評価が下がった分、相続税が下がる、ということです。
しかし、注意しなければいけないポイントがあります。
現金は、相続財産であるのと同時に「納税の手段」でもあるのです。
相続税の課税対象を減らそうとして、現金がなくなればなくなるほど、相続税を納める時の「支払手段」が枯渇してしまいます。
相続税対策をすることによって、相続税が納められなくなったりしたら、本末転倒です。
また、現金を不動産の購入に充てて、相続税が安くなるのはいいのですが、実際にその土地や建物が活かせないのであれば、買った意味がありません。
1億円の現金が6,000万円の資産に化けて、相続税が安くなるのはいいのですが、その6,000万円の資産が、実は売るとしたら3,000万円の価値しかないとしたら、それは相続税が安くなったからといって、喜ぶべきことなのでしょうか?
7,000万円(=1億円△3,000万円)の財産が失われただけです。
不動産を購入すると分けづらくなる
不動産の購入により相続税が安くなることは、相続人にとってはよいことのように思えるかもしれませんが、実際に相続人間で遺産分けをすることを考えると、不動産はネックになります。
分けづらい財産なのです。
分けるのが難しいからといって共有にすると、ますます大変になりますので、それ相応の対応が必要となります(下記の記事を参照)。
不動産の平等な遺産分けを目指すな!「1億6,000万円の非課税」は適用した方がいい?
配偶者が相続すれば「1億6,000万円の財産まで非課税」になるという、「配偶者の税額軽減」という特例があります。
これも注意すべき点が2つあります。
1つ目は、その配偶者が亡くなった場合、今度は配偶者の税額軽減を受けられないこと(もう配偶者がいませんからね)、相続税の非課税枠を計算する上での法定相続人が(配偶者が亡くなった分)1人減ることなどにより、今回よりも相続税がかかりやすくなることです。
今回の相続(「一次相続」と言います)で相続税が安くなった分、次の相続(「二次相続」と言います)で相続税が増える可能性があるのです。
安くなった分以上に増えることもあるので、二次相続を含めたシミュレーションが必須です。
2つ目は、その配偶者が亡くなった場合、親のいない相続になる、ということです。
親の目が光っているのといないのとでは、遺産分けの様相が変わる場合があります。
二次相続に後回しにせず、相続税がかかってでも一次相続で子供間の遺産分けの決着を付けた方がよい場合もあります。
想う相続税理士