相続税専門税理士の富山です。
今回は、死亡退職金の受取りを辞退した場合の、相続税の課税関係について、お話します。
相続財産とみなされて相続税が課税される死亡退職金
勤務先からご遺族の方に支払われる死亡退職金は、亡くなった方が所有していた財産ではないので、本来の相続財産ではありません。
しかし、そのご遺族の方が受ける経済的利益に着目し、相続財産とみなして(みなし相続財産として)相続税が課税されます。
一度受け取った死亡退職金を返還したら?
国税庁HP・質疑応答事例(一部抜粋)
死亡退職金を辞退した場合
【照会要旨】
A(株)は、社長が死亡したため、株主総会及び取締役会の決議に基づき死亡退職金として1億円をその遺族に支払っていましたが、その後、遺族から退職金受領を辞退したい旨の申し入れがあり、1億円が返還されました。この場合、相続税の課税はどのようになるのでしょうか。
【回答要旨】
社長の遺族が受領した退職金1億円は、その支給について正当な権限を有する株主総会及び取締役会の決議に基づいて支給されたものですから、受領した退職金を返還したとしても相続税が課税されることにかわりはありません。
上記の質疑応答事例では、ご遺族の方が一度死亡退職金を受け取ったら、それを後から勤務先に返還した場合でも、相続税が課税される、と解説しています。
受け取る前に辞退したらどうなる?
それでは、最初から受け取らなかった場合にはどうなるのでしょうか?
死亡退職金の課税に関する相続税法の条文を見てみます。
相続税法(一部抜粋)
第3条 相続又は遺贈により取得したものとみなす場合
次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該各号に掲げる者が、当該各号に掲げる財産を相続又は遺贈により取得したものとみなす。
二 被相続人の死亡により相続人その他の者が当該被相続人に支給されるべきであつた退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(政令で定める給付を含む。)で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものの支給を受けた場合においては、当該給与の支給を受けた者について、当該給与
上記の条文を見ると、「支給が確定したものの『支給を受けた場合』」とあるので、(一度受け取った後に返還するのではなく)最初から支給を受けなければ、相続税は課税されない、と読めるかもしれません。
しかし、これは私見ですが、会社の正式な決議により支給が確定した段階で、相続税の課税が発生するものと思われます。
つまり、最初から受取りを拒否して支給を受けなくても、相続税が課税されるものと思われます。
退職金は、生前の会社に対する功績などを考慮して支払われるものです。
給与の後払い的な性格もあります。
ご存命であれば、退職の際に受け取ることが予定されていたお金です。
正式に株主総会等の決議があった段階で、その経済的利益(財産性)が発生しているモノと考えられます。
想う相続税理士